雪恋ふ花 -Snow Drop-
春人は珠をそのまま自分のベッドに運ぶと、セーターを脱がせてそっと寝かせた。
いったい何があったんだ。
珠が自分から話す気になるまで待つつもりだが、心配なことに変わりはない。
その時、珠が写真集を握りしめているのを見つけて、そっと枕元の机に置いた。
まずは、ゆっくり寝かせてやりたい。
そして春人は干してあった寝袋を持ってきて、ソファーで寝ることにした。
珠を気にしながらも、スキーの疲れで春人はいつしか眠りに落ちていた。
真夜中、春人は人の気配にハッと目を覚ますと、ソファーの横に珠がじっと座っている。
「どうした?」
珠が黙って首をふる。
「おいで」
まだ、まどろんでいたせいもあって、春人はごく自然に珠を抱き寄せていた。
寝袋の上に珠をのせて、ラッコの親子みたいだなどと寝ぼけた頭で考えながら、寝袋のチャックを開けると、小柄な珠はスポンと寝袋の中におさまった。
そして、春人はそのまま、眠りの世界へひきこまれた。