雪恋ふ花 -Snow Drop-

「顔洗っておいで。玄関の横の引き戸が洗面所で、トイレは玄関から1つ目のドアーね」


珠はトイレに入って驚いた。
何、これ?
トイレには所せましと観葉植物が並んでいた。
飾りじゃなくて、生きてる……。

洗面所の鏡に映った自分の顔を見て、さらに驚いた。
クレンジングされている?
あんなに泣いたのに眼がはれていないのも、春人が冷たいアイシートをのせてくれていたからだ。

そして、タオルと女性用の携帯スキンケアセットが用意されている。
珠が寝ている間に買ってきてくれたらしい。

歯を磨きながら、珠は大切なことを思い出した。
春人は今日予定があると言っていなかったか?
だから、昨日の夜にスキーに行くことになったのだから。
珠は急いでリビングに戻った。


「春さん、今日、予定あるんでしょ?」

「え?」

春人がきょとんとする。


「だから金曜日のナイターにしようって」

「ああ、あれね。予定なくなったんだ。だから、今日はフリーだよ」

春人が焼きあがったホットケーキをフライパンから皿に移しながら言った。


「そうなんだ?」

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