士農工商犬猫ドンバ
１９６９年 横浜ザキ
さて、昭和４４年の話。時は３月梅の頃、俺は１８番茶も出花。
ここは伊勢佐木二丁目あたり。通称ザキの飲み屋街の一角。
中二階に突き出たステージに、客席からおひねりが飛んでくる。
リクエストはキエンセラ。 俺等、マンボなんかじゃ演らねえ。
エイトビートのゴリゴリロック。
でも、なんでギリシャの船員がこの曲好きなのか、謎のままだ。
ま、プーチになりゃいいか。 へへ
こないだ、階段でドンバ風が覗いてた。ありゃヤマトの連中だ。
まだ柳ジョージでも演ってると思ったか。 残念でした。
ピーナツも去年からすっかり変わっちゃったよ。
今じゃ、外国船員と取り巻きおねえちゃん達の溜まり場に
なってるってわけだ。
そんなラストステージが終わって楽屋に戻るとマネ公が居た
おっ、きょうは何だよ。 早く先月のギャラ払えよ。
赤い顔してパラヨッテんのか？
「ふん まあ待てよ タンメねえか」
あるよ ほらよ
「っへ、なんだよこりゃ。ヨーモクねえのか」
なんだと、調子こくなよ。 安いネカで使いやがってよ。
「っへ、まあいいや、ハイライトでよ。 ザラハイくれ」
なんなんだよマネ公。 ラリってんのかよ。
「バカこけ。なあ、ユーたちさ、ネカほしくねえ？っひっひ」
・・・なによ？
「ネカほしいだろ？ きょうはゴトシのナシハだ」
っへ、どうせとんでもねえとこのビータだろ。
「おお、ビータだよ。 いやならいいぞ」
まあいい 話せよ
「よおユー達さ。ツエージュー万プレーヤーになりてえって
いつも言ってたよな。 へへ」
ああ・・・そんで、なんなんだよ。
「ビータハコバンでツエージュー、３ヶ月でイージュー
どうだ、稼げんぞ。 おいしいだろ やんねえか？」
どうせ、何だかんだハネてハーマンがいいとこじゃねえのか。
「ばかやろう！手取りだよ。手取りツエージューパーだ」
ほんとかよ？！
「スーバンもＯＫだ。 バンマス手当てゲーマン」
ほお！ 場所はどこよ？
「一人立ちんぼ入れて６人にしろよ」
スーバンありで手当ゲーマンか。 場所を言えよ。
「上海だ 来月から」
シャンハイ？! 中国の？どこにあんだよシャンハイってよ。
ドンバなんかできんのかよ。 だいたい、帰って来れんのかよ。
「おお？ 嫌ならいいよお っへ やめっか？」
待てよ。 ばばあのストリップのツナギじゃねえだろな。
「ば～か。 テルホだよ高級テルホのステージだ」
ふーん、マフィアの仕切りとかじゃねえのかよ。バイヤだろ。
「ヤサはテルホのヤーヘ。 シーメはつかねえけどタイバンは
いねえから、好きにやれんぞ。 ナオン付だしよ うっへっへ」
おお いいじゃん！ いいじゃんよ やろうぜ、やろうぜ。
「よし、じゃあマリキだな」
パスポートとかどうすんのさ。
「全部俺が用意する。 写真だけもってこい」
飛行機か？
「あたりめえだ。ネーフでとろとろ行けるかよ。
羽田から２日目にゃ着く」
わかった、やろうじゃねえか。 スーバンありな。
帰ったら残り半分ちゃんと払えよ。先月のギャラも遅れてんぞ。
「心配すんな。ちゃんと払う。向こうじゃプーチで暮らせる。
なんたってテルホのクーキャだ、ネカチモばっかしよ。
でもよ、チーバクでやられたら知らねえよ へっへ」
「ああ、それとよ聖者の行進とイーライシャンはメモっとけ。
エニーキーでな。ウタバンあるらしい。
この２曲はプーチ５０ドルだ、すげえべ。
クーキャ入って来たらすぐインストで流せ」
うおーすげーじゃん！ プーチで５０ダラー？ ほんとかよ。
ふかしてんじゃねえだろな。
「ホ・ン・ト！ なっ どうよ キゲンゴだろ」
おお、まあな。 で、何もってけばいいのよ。
「だからよ、テルホのゴトシだって言ってんだろ。
ユニケーに白のスーツとツンパにシャツワイ、あとは正露丸
入れてきゃいいのよ。 足りなきゃナオンに買ってもらえ。
得意だろ。 へへ パツキンも来るぞ。
でもわかってんな、はまんなよ。 ナオンとブーシャ、チーバクは
はまったらバイヤ。バイヤコンディオスマイダーリンだ ひっひ」
楽器どうすんの？ 手持ちだけ？
「タイコとヤノピとアンプ類は向こうにある。 あとはターギと
サックスは持ってけ。 荷物は少なくしろよ。 金とられる」
メンフとかは？
「バッカやろう。向こうはメンフなんか見ねえよ。
ズージャとかスタンダード演れ。ショーが入ったらショケンでやれ」
ふーんそうか。 ま、いいわ。
ズージャはいいけど、ワイアンとかトリカンやるかな。
「まあな、アメ公の客も多いからやるな」
ここよりいいじゃん。 よう、イズミ行こうぜ。
ノーギャラの立ちんぼ探してさ、ボーヤでいいべ。 なっ
おお、じゃ行くか。 みんな行くか？
イエイ行こうぜ行こうぜ。
「よーし じゃマリキだな」
そんで何ていうテルホよ？
「へっへ マンダリンだ」
ここは伊勢佐木二丁目あたり。通称ザキの飲み屋街の一角。
中二階に突き出たステージに、客席からおひねりが飛んでくる。
リクエストはキエンセラ。 俺等、マンボなんかじゃ演らねえ。
エイトビートのゴリゴリロック。
でも、なんでギリシャの船員がこの曲好きなのか、謎のままだ。
ま、プーチになりゃいいか。 へへ
こないだ、階段でドンバ風が覗いてた。ありゃヤマトの連中だ。
まだ柳ジョージでも演ってると思ったか。 残念でした。
ピーナツも去年からすっかり変わっちゃったよ。
今じゃ、外国船員と取り巻きおねえちゃん達の溜まり場に
なってるってわけだ。
そんなラストステージが終わって楽屋に戻るとマネ公が居た
おっ、きょうは何だよ。 早く先月のギャラ払えよ。
赤い顔してパラヨッテんのか？
「ふん まあ待てよ タンメねえか」
あるよ ほらよ
「っへ、なんだよこりゃ。ヨーモクねえのか」
なんだと、調子こくなよ。 安いネカで使いやがってよ。
「っへ、まあいいや、ハイライトでよ。 ザラハイくれ」
なんなんだよマネ公。 ラリってんのかよ。
「バカこけ。なあ、ユーたちさ、ネカほしくねえ？っひっひ」
・・・なによ？
「ネカほしいだろ？ きょうはゴトシのナシハだ」
っへ、どうせとんでもねえとこのビータだろ。
「おお、ビータだよ。 いやならいいぞ」
まあいい 話せよ
「よおユー達さ。ツエージュー万プレーヤーになりてえって
いつも言ってたよな。 へへ」
ああ・・・そんで、なんなんだよ。
「ビータハコバンでツエージュー、３ヶ月でイージュー
どうだ、稼げんぞ。 おいしいだろ やんねえか？」
どうせ、何だかんだハネてハーマンがいいとこじゃねえのか。
「ばかやろう！手取りだよ。手取りツエージューパーだ」
ほんとかよ？！
「スーバンもＯＫだ。 バンマス手当てゲーマン」
ほお！ 場所はどこよ？
「一人立ちんぼ入れて６人にしろよ」
スーバンありで手当ゲーマンか。 場所を言えよ。
「上海だ 来月から」
シャンハイ？! 中国の？どこにあんだよシャンハイってよ。
ドンバなんかできんのかよ。 だいたい、帰って来れんのかよ。
「おお？ 嫌ならいいよお っへ やめっか？」
待てよ。 ばばあのストリップのツナギじゃねえだろな。
「ば～か。 テルホだよ高級テルホのステージだ」
ふーん、マフィアの仕切りとかじゃねえのかよ。バイヤだろ。
「ヤサはテルホのヤーヘ。 シーメはつかねえけどタイバンは
いねえから、好きにやれんぞ。 ナオン付だしよ うっへっへ」
おお いいじゃん！ いいじゃんよ やろうぜ、やろうぜ。
「よし、じゃあマリキだな」
パスポートとかどうすんのさ。
「全部俺が用意する。 写真だけもってこい」
飛行機か？
「あたりめえだ。ネーフでとろとろ行けるかよ。
羽田から２日目にゃ着く」
わかった、やろうじゃねえか。 スーバンありな。
帰ったら残り半分ちゃんと払えよ。先月のギャラも遅れてんぞ。
「心配すんな。ちゃんと払う。向こうじゃプーチで暮らせる。
なんたってテルホのクーキャだ、ネカチモばっかしよ。
でもよ、チーバクでやられたら知らねえよ へっへ」
「ああ、それとよ聖者の行進とイーライシャンはメモっとけ。
エニーキーでな。ウタバンあるらしい。
この２曲はプーチ５０ドルだ、すげえべ。
クーキャ入って来たらすぐインストで流せ」
うおーすげーじゃん！ プーチで５０ダラー？ ほんとかよ。
ふかしてんじゃねえだろな。
「ホ・ン・ト！ なっ どうよ キゲンゴだろ」
おお、まあな。 で、何もってけばいいのよ。
「だからよ、テルホのゴトシだって言ってんだろ。
ユニケーに白のスーツとツンパにシャツワイ、あとは正露丸
入れてきゃいいのよ。 足りなきゃナオンに買ってもらえ。
得意だろ。 へへ パツキンも来るぞ。
でもわかってんな、はまんなよ。 ナオンとブーシャ、チーバクは
はまったらバイヤ。バイヤコンディオスマイダーリンだ ひっひ」
楽器どうすんの？ 手持ちだけ？
「タイコとヤノピとアンプ類は向こうにある。 あとはターギと
サックスは持ってけ。 荷物は少なくしろよ。 金とられる」
メンフとかは？
「バッカやろう。向こうはメンフなんか見ねえよ。
ズージャとかスタンダード演れ。ショーが入ったらショケンでやれ」
ふーんそうか。 ま、いいわ。
ズージャはいいけど、ワイアンとかトリカンやるかな。
「まあな、アメ公の客も多いからやるな」
ここよりいいじゃん。 よう、イズミ行こうぜ。
ノーギャラの立ちんぼ探してさ、ボーヤでいいべ。 なっ
おお、じゃ行くか。 みんな行くか？
イエイ行こうぜ行こうぜ。
「よーし じゃマリキだな」
そんで何ていうテルホよ？
「へっへ マンダリンだ」
