追憶乃記憶
巫女乃御話
太古から、巫女は潜在的な能力を持ちこの世に生まれ落ちた。
彼女たちは最初、「異能者」としか呼ばれない。
「巫女」とは、精霊との契約を終えた者のみがそう呼ばれていた為、精霊と対話をすることが出来ていたとしても、契約を結べていなければそれは只の「異能者」だった。
巫女となったものは、老若問わずにその能力を世界の調停とヒトの平和に使うことで、ヒトから生存を許された。
例え異端でも、自分たちにとってプラスだと考えたヒトによって、その存在を許されてきたのだ。
この時代に、とてもとても力のある巫女が誕生した。
聡明で美しい彼女の名は、「ユウレイカ」といった。
強大な力の代償か、彼女はヒトよりも天使や悪魔、精霊のような外見をしていた。
月光に輝く、銀の髪。
海の中にいるかのような錯覚を覚える、蒼い瞳。
透き通るような白い肌。
青白くも見えるその肌には、精霊と契約した証である紋章が薄く紅く浮いていた。
だが彼女は、強大な力を持ちながら、禁を犯した。
巫女として精霊と契約を結んでいたにも関わらず、悪魔の甘言に耳を傾けてしまった。
悪魔と、契約を結んでしまったのだ。
「悪魔」とは、巫女や天使、精霊と対極に位置する『理に外れたもの』だ。
死神とも似ていて人を襲うが、悪魔はヒトの負の感情や、異能者や巫女の純潔を好む。
だが巫女は、悪魔や死神からヒトと自らを守るために様々な技術を編み出した。
精霊の力により、巫女は彼らと渡り合うだけの力を手にしたのだ。
誰よりも平和を望んでいたはずの「ユウレイカ」は、誰よりも不秩序を望む「悪魔」との契約によって純潔を奪われ、巫女としての能力を大幅に減少してしまう。
本来ならば失われるはずの命と能力が尽きなかったのは、彼女が元来持ちえたはずの能力の巨大さのおかげだろう。
悪魔の名は、「クラルド・アンダーウィンド」。
巫女の名は、「ユウレイカ・アンダーウィンド」。