追憶乃記憶

 ユウレイカは元々、「ユウレイカ・ファステッタ」という名で生を受けた。
 だが、悪魔と契約したことで初代の「聖女」、姉の「ウルティア・ファステッタ」にファステッタを名乗ることを禁じられた。
 表向きには離縁とされていた理由だが、噂ではファステッタの名を汚さないためだとか、巫女の血筋に悪魔を存在させないためだろうなどと言われているそうだ。

 ユウレイカの名は、悪魔と契約したことの何よりの証拠。

 以来彼女は、その名から、「悪魔の花嫁」と、そう呼ばれるようになった。

 彼女の姉、ウルティアは、ユウレイカには及ばないにしてもそれなりに大きな力を持った巫女であった。
 妹ほどでないにしても、それなりに頭脳明晰で、責任感も持ち合わせていた。

 成長した彼女は巫女として、世界中の巫女を統括する「塔」を作り、「法」を作った。
 そうしてその「法」の中で、最上位の地位となる「聖女」の役割を自らが担った。

 そんな優れた巫女であったウルティアですら、クラルドの悪魔としての力を恐れ、危険視していた。

 彼を「世界に害なすもの」として恐れたウルティアは、この世のどこかにクラルドを封印した。

 最初にここに記したように、巫女になるには天性の才能が不可欠である。
 なりたいからといって、なれるものではない。
 また、男が巫女になることはできない。
 生まれついての才能が大なり小なりなければ、精霊を見ることは叶わず、普通のヒトとして生きていくことになるだろう。
 精霊を見るということは、訓練して身に着く力ではないのだ。

 だが、自分がその能力の持ち主かどうかは、精霊と対話が出来るまで本人の自覚がないことが多い。
< 5 / 25 >

この作品をシェア

pagetop