追憶乃記憶

天使乃御話


 遠い昔のお話です。
 まだまだ世界はぐちゃぐちゃで、全てが混沌に満ちていた頃のお話。

 天使は、世界を見つめていました。

 ずっとずっと、見つめていました。

 そうしてある時、悪魔が村を滅ぼし、女に子供を残しました。
 ある国は、死神が全ての穢れた魂を持ち去りました。

 天使は思います。

 「ヒトとは、なんて愚かなのだろう。」

 天使は思います。

 「どうしてヒトは、悪魔と死神とばかり関わるのだろう。」

 天使は地上に降り立ち、ヒトに化けて、ヒトを見つめます。

 ある日、天使のもとに、一人の娘がやってきました。
 娘はそれはよい心と美しい美貌を持っていて、その村の誰からも愛される娘でした。

 娘は、どこから来たともわからぬ天使に、とても優しく接しました。
 他のヒトから冷たい言葉を言われても、天使に会うことをやめようとしませんでした。

 天使は不思議に思います。

 「何故、このヒトは違うのだろう。」
 「何故、このヒトを見ると、心が動くのだろう。」

 娘は、天使にこう言いました。

 「誰が何と言おうと、あなたほど美しい人を、私は知らないわ。」
 「あなたと一緒にいられるだけで、私はとても幸せなのよ。」

 娘は、ついに村から追い出されてしまいました。
 奇妙な天使と、一緒にいたから。

 天使は、娘を不憫に思い、姿を消しました。

 けれど、いつまでも娘はひとりぼっち。

 人はなんて愚かなのだろう。

 仕方なく、天使は娘のもとに戻ってきました。
 天使が少しの間いなかっただけで、娘はさらに美しく、年頃の娘となりました。
 
 ヒトの成長はとても速い。
 それにも関わらず、娘は天使を待ち続けていました。

 天使と娘は結ばれて、娘に天使の子供が出来ました。

 天使の子供には、「ミコ」という名が与えられました。
 ミコには、神聖な力が宿っていました。

 悪魔を払う力。
 死神を遠ざける力。

 天使がヒトに、与えた力。
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