天使のアリア––翼の記憶––
「お名前、聞いてもいいかな?」

私の問いに向日葵のような笑顔で答えてくれた。

「わたしは美門ディナ。おとうさんが日本人で、おかあさんががいこくの人なの」

ディナちゃんの話を聞いて理解した。

それで、こんなに美しいオッドアイを持っているんだね。

「どうしてここで寝ていたんだ?」

藍羅先輩が最もなことを尋ねる。

「タマとあそんでたら、ねむくなっちゃったの」

「タマ…?」

ディナちゃんは首を傾げる私たちに予想外の答えをくれた。

とびっきりの笑顔でそれを指差した。

「この白いねこのなまえだよ!」

キラキラと輝くその瞳に濁りは一切ない。純真だ、無垢だ…

猫にタマという名前を付けるのは何とも日本らしくてスタンダードだな、とも思った。

猫につけるならば、の話ではあるが。

「でぃ、ディナちゃん?本当にタマってこの子のこと?」

「うん!」

先輩と二人、目を合わせた。その目には困惑の色が映っている。きっとそれは私も同じだろう。

ふわりと目を細めて笑う彼女の指の先、
それは、

「…これ、兎だよ?」

長い耳が白くて丸っこい兎。目の色は赤ではなく月のような金色だ。

私達の話が分からないようで、ただ鼻をヒクヒクと動かして周りの様子を伺っている。

…どう頑張っても猫には見えません。

「え?rabbit のことをねこ、catのことをうさぎっていうんじゃないの?」

ますます分からないというようにディナちゃんは首を傾げた。

「…そ、それ、逆だよ…」

誰ですか、こんなにも天真爛漫で、純粋で素直ないい子にそんなこと教えたのは。間違い方が酷い、酷すぎる。流石に無理があるだろう、それは…

「え?でもおにいちゃんはそういって…」

「ディナちゃん!?」

ディナちゃんは言い切らないうちにグラリと倒れた。呼びかけても反応はない。
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