天使のアリア––翼の記憶––
「この子を病院に運んできます!先輩はここで待っていてください!」
「あぁ、あたしも行く!」
立ち上がり正面玄関へ向かおうとした先輩を止める。
「駄目です!先輩が今病院内に入れば確実に面倒臭いことになるでしょう?先輩が美しい上に、斎藤先生の一件もあるんですよ!」
とにかくそこで待っていてくださいね、と先輩と兎のタマさんを残し、私はディナちゃんを抱っこして病院へと向かった。
*
「ありがとうございます。ディナちゃんを運んでくださって」
綺麗な看護婦さんと共にディナちゃんを運んだ。彼女はどうやらディナちゃんの担当らしい。
そしてディナちゃんの部屋だが、なんと
一人部屋だった。少し驚いた。
暖かい日の入るディナちゃんの病室に置いてあるチェストには、太陽のように暖かい色をしたオレンジのバラと白い霞草と写真が飾られている。
淡い水色のフレームに飾られたその写真は、この位置からは遠くてよくは見えないけれど、きっと家族写真だろうなと思う。もう一つ写真が飾られているが、あれは何だろう。
「いえ…大したことなくて良かったです」
看護婦さんが教えてくれたが、ディナちゃんが倒れたのは、朝飲んだ薬の副作用で眠くなったからだったらしい。彼女にはよくあることらしく、全く心配いらないんだと。
「でも、助かりました。ディナちゃんは最近病院の芝生に遊びに来ている兎のタマがお気に入りのようで、目を離すとすぐ外に出てタマと遊ぼうとするので…」
クスクスと笑うその姿は凛としていてまるで百合のようだった。美しいと思った。見た目の美しさではなく、心が美しいんだなと思った。
「ディナちゃんが倒れたと聞いたが…!」
扉がガラリと開かれた。
飛び込んできたのは、
「さ、斎藤先生!?」
「え、華原さん!?どうしてここへ!?」
走って来たのか、白衣は乱れ、息を切らした斎藤先生が目を見開いてこちらを見ていた。
「そうですか、華原さんが…」
かくかくしかじか、私がここにいる理由を説明すると斎藤先生は納得したように微笑んだ。きっとこういう笑顔に皆惚れるのだろう、と思った。
「…ディナちゃんは僕の担当なんです」
斎藤先生は目を細めてディナちゃんの頭を撫でた。
「…ディナちゃんは、どういった病気なんです?」
私の言葉に斎藤先生は顔色を変えた。
「あぁ、あたしも行く!」
立ち上がり正面玄関へ向かおうとした先輩を止める。
「駄目です!先輩が今病院内に入れば確実に面倒臭いことになるでしょう?先輩が美しい上に、斎藤先生の一件もあるんですよ!」
とにかくそこで待っていてくださいね、と先輩と兎のタマさんを残し、私はディナちゃんを抱っこして病院へと向かった。
*
「ありがとうございます。ディナちゃんを運んでくださって」
綺麗な看護婦さんと共にディナちゃんを運んだ。彼女はどうやらディナちゃんの担当らしい。
そしてディナちゃんの部屋だが、なんと
一人部屋だった。少し驚いた。
暖かい日の入るディナちゃんの病室に置いてあるチェストには、太陽のように暖かい色をしたオレンジのバラと白い霞草と写真が飾られている。
淡い水色のフレームに飾られたその写真は、この位置からは遠くてよくは見えないけれど、きっと家族写真だろうなと思う。もう一つ写真が飾られているが、あれは何だろう。
「いえ…大したことなくて良かったです」
看護婦さんが教えてくれたが、ディナちゃんが倒れたのは、朝飲んだ薬の副作用で眠くなったからだったらしい。彼女にはよくあることらしく、全く心配いらないんだと。
「でも、助かりました。ディナちゃんは最近病院の芝生に遊びに来ている兎のタマがお気に入りのようで、目を離すとすぐ外に出てタマと遊ぼうとするので…」
クスクスと笑うその姿は凛としていてまるで百合のようだった。美しいと思った。見た目の美しさではなく、心が美しいんだなと思った。
「ディナちゃんが倒れたと聞いたが…!」
扉がガラリと開かれた。
飛び込んできたのは、
「さ、斎藤先生!?」
「え、華原さん!?どうしてここへ!?」
走って来たのか、白衣は乱れ、息を切らした斎藤先生が目を見開いてこちらを見ていた。
「そうですか、華原さんが…」
かくかくしかじか、私がここにいる理由を説明すると斎藤先生は納得したように微笑んだ。きっとこういう笑顔に皆惚れるのだろう、と思った。
「…ディナちゃんは僕の担当なんです」
斎藤先生は目を細めてディナちゃんの頭を撫でた。
「…ディナちゃんは、どういった病気なんです?」
私の言葉に斎藤先生は顔色を変えた。