天使のアリア––翼の記憶––
「…そうですね…彼女は不治の病と呼ばれる病気の一つにかかっています」

「ふ、不治の病…?」

「…何億人に一人の割合で起こる、本当に珍しい病気です。彼女の母親もこの病気で亡くなったそうですから、きっと遺伝なのでしょう。彼女は母親の形質を濃く引き継いだようですし」

そう言って淡い水色のフレームに入った写真を私に見せてくれた。

「わ、可愛い…」

思わずため息がでるほど、美しかった。

ディナちゃんは、4歳くらいだろうか。今よりもっともっと幼い彼女が写っている。満面の笑みを浮かべて、心から嬉しそうにピースサインをしている。

その上にはディナちゃんと同じ淡い金色、ウェーブのかかった美しい髪をもつ、麗しい女の人がいた。

職人さんが丹精込めて作ったお人形さんのように整った顔立ち。

びっしりと生えそろったまつ毛に、ぱっちり大きな目。その瞳の色はまるで青空のような澄んだ水色をしている。ディナちゃんの左目と同じ色だ。

瞳の色だけではない。儚くて可憐な雰囲気までもディナちゃんにそっくりだった。否、ディナちゃんが彼女に似たのか。

この人がディナちゃんのお母さんだとすぐに分かった。そっくり。

見るからにとても優しそうで、本当に幸せそうに微笑んでいる。

その隣には、男の人が写っていた。

きっとディナちゃんのお父さんだろう。

日本人らしく、短い黒髪が格好いい人だ。

しかし、はっきりした目鼻立ち、整いに整ったお顔立ち、そしてその右の瞳の色は彼女と右目と同じ黄金の瞳は日本人離れしていて、何ともミステリアスだ。

そしてその左目の漆黒はまるで全てを包み込んでしまう闇のように暗かった。

お顔や雰囲気から男らしく力強いことが見て取れるけれど、その笑顔からは確かに優しさも感じ取れて、きっと素敵なお父さんなんだろうな。

その下には男の子が写っていた。中学生くらいだろうか。

左目は空色、右目は黄金、ディナちゃんと同じ瞳を持った、これまた美しい男の子だ。

ディナちゃんはお母さんの形質を多く引き継いだけれど、この子はお父さんの形質を多く引き継いだらしい。ストレートの黒髪が可愛らしくも格好いい。

この年でこれだけ格好良ければ今はモデルとか、俳優さんとか、そういう仕事をしていたって可笑しくはないと思う。

写真に写っているディナちゃん一家は皆美形で、それも桁違いなのだけれど、それ以上に素敵な笑顔をしていた。

幸せなんだな、と写真を一目見るだけで十分に伝わってくる。

素敵な家族だな、と思った。
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