天使のアリア––翼の記憶––
「それ、おにーちゃんがもってきてくれるの!」
「お兄ちゃんって、あの写真に写っていた?」
ディナちゃんと同じ色の瞳をもつ、あの美しい黒髪の男の子?
ディナちゃんは笑顔で大きく頷いた。
「おにいちゃん、まいにちきてくれるの。それでね、きれいなおはなも、もってきてくれるの!」
「お兄ちゃんが大好きなんだな」
「うん!」
お兄さんが羨ましい。こんな可愛い子に大好きなんて言われるなんて…!
「あの写真は何だ?」
藍羅先輩が尋ねる。先輩が指を指したのは、家族写真のとなりにある、ベージュのフレームに入った写真だった。
よく見ると、雲一つなく晴れ渡った空の下、芝生の生えた広い高原に、ただ大きな木だけが写っている。凄く綺麗な写真。
「それもおにいちゃんがくれたの!」
「お兄さん、写真家なのか?」
ディナちゃんは首を横に振った。
「おにいちゃんはこうこうせいだよ。さんねんせいっていってた」
あたしと同い年だな、と藍羅先輩は微笑んだ。
「じゃあ、どうしてこの写真をディナちゃんに?」
確かに綺麗な写真ではあるけれど、これを渡す理由が分からない。
「それはね、おかあさんのくにのことばで、Tree of Life っていうきなんだって」
ディナちゃんのお母さんは英語圏だったのだろうか。もしそうであるなら、直訳してみると、命の木となる。生命樹と言ったところか。
「すごくながいきしているきで、そのきのはっぱやみきからげんきをもらえるんだって。
でも、びょういんにはかふんしょうのひとがいるかもしれないからって、しゃしんをくれたんだ」
私はもう一度その木の写真を見た。
凄く大きな、杉の木のように見える。
これが、命の木、か。
「お兄さん、優しいんだね」
ディナちゃんのために、花をもってきたり、写真を渡したり。
本当にお兄さんはディナちゃんのことが好きなんだな。
ディナちゃんはニコニコと天真爛漫な笑顔で頷いた。
けれど、ディナちゃんの顔はどこか悲しげだった。
「お兄ちゃんって、あの写真に写っていた?」
ディナちゃんと同じ色の瞳をもつ、あの美しい黒髪の男の子?
ディナちゃんは笑顔で大きく頷いた。
「おにいちゃん、まいにちきてくれるの。それでね、きれいなおはなも、もってきてくれるの!」
「お兄ちゃんが大好きなんだな」
「うん!」
お兄さんが羨ましい。こんな可愛い子に大好きなんて言われるなんて…!
「あの写真は何だ?」
藍羅先輩が尋ねる。先輩が指を指したのは、家族写真のとなりにある、ベージュのフレームに入った写真だった。
よく見ると、雲一つなく晴れ渡った空の下、芝生の生えた広い高原に、ただ大きな木だけが写っている。凄く綺麗な写真。
「それもおにいちゃんがくれたの!」
「お兄さん、写真家なのか?」
ディナちゃんは首を横に振った。
「おにいちゃんはこうこうせいだよ。さんねんせいっていってた」
あたしと同い年だな、と藍羅先輩は微笑んだ。
「じゃあ、どうしてこの写真をディナちゃんに?」
確かに綺麗な写真ではあるけれど、これを渡す理由が分からない。
「それはね、おかあさんのくにのことばで、Tree of Life っていうきなんだって」
ディナちゃんのお母さんは英語圏だったのだろうか。もしそうであるなら、直訳してみると、命の木となる。生命樹と言ったところか。
「すごくながいきしているきで、そのきのはっぱやみきからげんきをもらえるんだって。
でも、びょういんにはかふんしょうのひとがいるかもしれないからって、しゃしんをくれたんだ」
私はもう一度その木の写真を見た。
凄く大きな、杉の木のように見える。
これが、命の木、か。
「お兄さん、優しいんだね」
ディナちゃんのために、花をもってきたり、写真を渡したり。
本当にお兄さんはディナちゃんのことが好きなんだな。
ディナちゃんはニコニコと天真爛漫な笑顔で頷いた。
けれど、ディナちゃんの顔はどこか悲しげだった。