天使のアリア––翼の記憶––
*
「先輩、やっぱりすごいです」
「何がだ?」
先輩は私の言葉がさっぱり分からないという顔をしたが、私は先輩がいてくれて、本当に良かったと心から思う。
私だけはディナちゃんを救ってあげられなかった。
ディナちゃんを救ってくれたのは、間違いなく藍羅先輩だ。
藍羅先輩の言葉が、ディナちゃんの固く閉じられていた心を溶かしたんだ。
「ディナちゃん、大丈夫でしょうか…」
あの後、ディナちゃんは泣いて疲れたのかぐっすり寝てしまった。
私達も本番があるので、そのまま寝かせてきたのだけれど、ちょっと心配だ。
藍羅先輩は控室の椅子に座って、手を組み上に伸ばしている。
「大丈夫なんじゃないか? きっと今もぐっすりと寝てるだろうし、起きれば看護婦さんとか呼ぶだろう。 それに、今考えたって、あたし達には本番がある。すぐに何か行動を起こすことはできない」
月子も分かっているだろう、先輩がまっすぐ私の目を見た。
真っ直ぐな、あまりにも真っ直ぐなその目は、まるで私の心まで見透かされているようで、ドキリとした。
「そうですね…」
ディナちゃんは心配だけど。
私にできることは、何もない。
私にはウサギや乙葉、北斗先輩や七星先輩、デューク先輩のように、戦える力があるわけではない。
何もできない、ただの、落ちこぼれな夢巫女。
そんな私にできることは、ただ目の前の本番を全うすること。
先輩の歌を引き立てること。
ただ、それだけだ。
今できることを、精一杯する。
それしか、できないのだから。
「それに、ディナちゃんも言ってただろう? あたし達の演奏会に来ると」
だったら余計に頑張らないとな、と藍羅先輩は微笑んだ。
私も頷いた。
「今日の演奏会に来ていなかったら、帰る時にでもディナちゃんの病室に寄ってから帰ろう。だから今は……」
先輩はそれしか言わなかったけれど、その続きの言葉は分かった。
だから今は、自分達ができることをしよう。
きっと、そういうことなんでしょう?
私は先輩の目を見て頷いた。
そこで斎藤先生がやってきて、私達は顔を見合わせて頷き、ステージへと向かった。
「先輩、やっぱりすごいです」
「何がだ?」
先輩は私の言葉がさっぱり分からないという顔をしたが、私は先輩がいてくれて、本当に良かったと心から思う。
私だけはディナちゃんを救ってあげられなかった。
ディナちゃんを救ってくれたのは、間違いなく藍羅先輩だ。
藍羅先輩の言葉が、ディナちゃんの固く閉じられていた心を溶かしたんだ。
「ディナちゃん、大丈夫でしょうか…」
あの後、ディナちゃんは泣いて疲れたのかぐっすり寝てしまった。
私達も本番があるので、そのまま寝かせてきたのだけれど、ちょっと心配だ。
藍羅先輩は控室の椅子に座って、手を組み上に伸ばしている。
「大丈夫なんじゃないか? きっと今もぐっすりと寝てるだろうし、起きれば看護婦さんとか呼ぶだろう。 それに、今考えたって、あたし達には本番がある。すぐに何か行動を起こすことはできない」
月子も分かっているだろう、先輩がまっすぐ私の目を見た。
真っ直ぐな、あまりにも真っ直ぐなその目は、まるで私の心まで見透かされているようで、ドキリとした。
「そうですね…」
ディナちゃんは心配だけど。
私にできることは、何もない。
私にはウサギや乙葉、北斗先輩や七星先輩、デューク先輩のように、戦える力があるわけではない。
何もできない、ただの、落ちこぼれな夢巫女。
そんな私にできることは、ただ目の前の本番を全うすること。
先輩の歌を引き立てること。
ただ、それだけだ。
今できることを、精一杯する。
それしか、できないのだから。
「それに、ディナちゃんも言ってただろう? あたし達の演奏会に来ると」
だったら余計に頑張らないとな、と藍羅先輩は微笑んだ。
私も頷いた。
「今日の演奏会に来ていなかったら、帰る時にでもディナちゃんの病室に寄ってから帰ろう。だから今は……」
先輩はそれしか言わなかったけれど、その続きの言葉は分かった。
だから今は、自分達ができることをしよう。
きっと、そういうことなんでしょう?
私は先輩の目を見て頷いた。
そこで斎藤先生がやってきて、私達は顔を見合わせて頷き、ステージへと向かった。