天使のアリア––翼の記憶––
「もー、二人ともいい加減にしてよー」
怒っているはずなのに、何だろう、この可愛さは。何でだろう、その声を聞くだけですごく気が抜けてしまう。
やっぱり、彼女ほど喧嘩の仲裁役に相応しい人物はいない。
「もー、二人はいつも喧嘩するんだからー」
プンプン、と小言をつかれる。
親などに言われれば多少イラつくものだが、乙葉が言うので全然イライラしない。さすが乙葉様だ。
「乙葉ちゃん、先輩が呼んでるみたいよ」
クラスメイトが乙葉に声をかけた。扉の方を見ると男子学生の姿があった。なんだか緊張した面持ちである。
多分、告白のお呼出だろうな。乙葉は藍羅先輩までとは言わないが、かなりモテるから。何てったって、学校のアイドルだもんね。
「ごめん、ちょっと行ってくるねー」
「知り合いか?」
ウサギの問いに乙葉はふるふると首を横に振った。
「告白かぁ。乙葉はモテるな」
ウサギの言葉に乙葉は複雑そうな笑顔をした。
「それを言ったらウサギもでしょー?」
寂しい、悲しい、切ない、そんな思いを隠そうとして作り上げた笑顔の仮面から滲み出たような、見るのも辛くなる表情。
何で、そんな顔をするの。
「…気をつけてね」
私がそう言うと、パッといつもの笑顔で私の言葉を笑い飛ばしてくれた。
「月子は心配しすぎだよー」
そして彼女はその男子学生の元へと向かった。
乙葉の後ろ姿を見ながらも、私は先程の彼女の笑顔が頭から離れなかった。苦しみを隠したような、あの笑顔が。
どうして、そんな顔をするの。
どんな辛いものをその胸に抱えているの。
私にできることはないのかな。
乙葉は私の親友だ。大切な大切な、唯一無二の存在。
だから、何だって話してほしい。
私は乙葉のために何だってするよ。
どんな困難なことでも、必死になって、精一杯、私にできる限り。
男子生徒と廊下で話している乙葉の姿を見つめていると、なぁ、とウサギが声をかけてきた。
「何よ」
ムッとして聞き返す。
また喧嘩をふっかけてきたのだろうか。
怒っているはずなのに、何だろう、この可愛さは。何でだろう、その声を聞くだけですごく気が抜けてしまう。
やっぱり、彼女ほど喧嘩の仲裁役に相応しい人物はいない。
「もー、二人はいつも喧嘩するんだからー」
プンプン、と小言をつかれる。
親などに言われれば多少イラつくものだが、乙葉が言うので全然イライラしない。さすが乙葉様だ。
「乙葉ちゃん、先輩が呼んでるみたいよ」
クラスメイトが乙葉に声をかけた。扉の方を見ると男子学生の姿があった。なんだか緊張した面持ちである。
多分、告白のお呼出だろうな。乙葉は藍羅先輩までとは言わないが、かなりモテるから。何てったって、学校のアイドルだもんね。
「ごめん、ちょっと行ってくるねー」
「知り合いか?」
ウサギの問いに乙葉はふるふると首を横に振った。
「告白かぁ。乙葉はモテるな」
ウサギの言葉に乙葉は複雑そうな笑顔をした。
「それを言ったらウサギもでしょー?」
寂しい、悲しい、切ない、そんな思いを隠そうとして作り上げた笑顔の仮面から滲み出たような、見るのも辛くなる表情。
何で、そんな顔をするの。
「…気をつけてね」
私がそう言うと、パッといつもの笑顔で私の言葉を笑い飛ばしてくれた。
「月子は心配しすぎだよー」
そして彼女はその男子学生の元へと向かった。
乙葉の後ろ姿を見ながらも、私は先程の彼女の笑顔が頭から離れなかった。苦しみを隠したような、あの笑顔が。
どうして、そんな顔をするの。
どんな辛いものをその胸に抱えているの。
私にできることはないのかな。
乙葉は私の親友だ。大切な大切な、唯一無二の存在。
だから、何だって話してほしい。
私は乙葉のために何だってするよ。
どんな困難なことでも、必死になって、精一杯、私にできる限り。
男子生徒と廊下で話している乙葉の姿を見つめていると、なぁ、とウサギが声をかけてきた。
「何よ」
ムッとして聞き返す。
また喧嘩をふっかけてきたのだろうか。