天使のアリア––翼の記憶––
*
「おはよう」
今日は余裕を持って家を出たため、遅刻にはならなかった。私も久しぶりに歩いて登校できた。
「おはよー」
乙葉がふわりと微笑む。まるで天使の如き笑顔である。
唐紅のリボンが頭上で揺れた。
いつもと同じ、乙葉の笑顔。
周りの皆を笑顔にしてしまう笑顔。
「おはよ。今日"は"、遅刻しなかったんだな」
今日は、と強調して言うのは、当然のことながらウサギである。
ニヤニヤと人を馬鹿にしたその表情を浮かべていてもなおモテているのだから謎である。コイツのどこがいいのだろうか。
「おはよ。遅刻しなかったんだからいいでしょ!」
ムッとして答える。
ウサギは私をイライラさせる天才だと思う。
「んな才能ねーよ。お前が勝手にイライラしてんじゃねぇか」
「はぁ?!」
反論しようとして、言えなかった。
なぜかと言うと、私の癒し、乙葉様が
「月子ー、喧嘩しちゃダメだよー?」
彼女独自のふんわりとした空気感で介入してくれたからである。
眉を下げて少し困ったような、呆れたような、そんな笑顔で私を見つめている。
「え、乙葉? 何で私だけ!?」
私は自分を指さした。
「ウサギは!? ウサギには何も言わないの!?」
ウサギを指さすと、乙葉は口を開いた。
「だってー。今回は月子が何も言わなければー、喧嘩に発展しなかったでしょー?」
「うっそ、それは…」
乙葉に言われたことが全て正しくて言い返せない。
ウサギはというと、涼しい顔をして言った。
「俺は悪くないってことなんだよな? 乙葉」
「…そうは言ってないんだけどー」
乙葉はますます困ったように眉を下げて、まるで子供のような私とウサギに呆れたように小さく笑った。
「おはよう」
今日は余裕を持って家を出たため、遅刻にはならなかった。私も久しぶりに歩いて登校できた。
「おはよー」
乙葉がふわりと微笑む。まるで天使の如き笑顔である。
唐紅のリボンが頭上で揺れた。
いつもと同じ、乙葉の笑顔。
周りの皆を笑顔にしてしまう笑顔。
「おはよ。今日"は"、遅刻しなかったんだな」
今日は、と強調して言うのは、当然のことながらウサギである。
ニヤニヤと人を馬鹿にしたその表情を浮かべていてもなおモテているのだから謎である。コイツのどこがいいのだろうか。
「おはよ。遅刻しなかったんだからいいでしょ!」
ムッとして答える。
ウサギは私をイライラさせる天才だと思う。
「んな才能ねーよ。お前が勝手にイライラしてんじゃねぇか」
「はぁ?!」
反論しようとして、言えなかった。
なぜかと言うと、私の癒し、乙葉様が
「月子ー、喧嘩しちゃダメだよー?」
彼女独自のふんわりとした空気感で介入してくれたからである。
眉を下げて少し困ったような、呆れたような、そんな笑顔で私を見つめている。
「え、乙葉? 何で私だけ!?」
私は自分を指さした。
「ウサギは!? ウサギには何も言わないの!?」
ウサギを指さすと、乙葉は口を開いた。
「だってー。今回は月子が何も言わなければー、喧嘩に発展しなかったでしょー?」
「うっそ、それは…」
乙葉に言われたことが全て正しくて言い返せない。
ウサギはというと、涼しい顔をして言った。
「俺は悪くないってことなんだよな? 乙葉」
「…そうは言ってないんだけどー」
乙葉はますます困ったように眉を下げて、まるで子供のような私とウサギに呆れたように小さく笑った。