天使のアリア––翼の記憶––
「でもー、二人ともどっちもどっちだよー? どんぐりの背比べー。五十歩百歩ー。分かったー?」
乙葉は腰に手を当てて、子供に諭すように言った。
「「…はーい」」
可愛くて可憐で、まるで母親みたいな乙葉には、誰も逆らえない。
その時ガラっと教室の扉が開く音がした。
「乙葉ちゃん! 数学の教科書持ってない?」
隣のクラスの子が入ってきて、乙葉に話しかける。
「あるよー!」
そう言って乙葉とその子は廊下にあるロッカーの元へ行ってしまった。
残されて二人になると、
「わ、悪かったな!」
ウサギが突然ぶっきらぼうな口調で言った。その目は明後日の方向を見ている。顔がわずかばかり赤くなっているような気がしたが、訳が分からない。
「…何が?」
何について、「悪かった」のか、もう記憶にない。
「…だ、だから、昨日の…」
昨日、と言われてようやく思い出した。
「あぁ、それ!」
私はパン、と手を叩いた。思いだせてスッキリした。
「って、何でウサギが謝るの?」
すると、ウサギはポカンと顔をあけた。カッコイイと言われるお顔も台無しだ。
「だ、だって、お前…」
「気にしなくていいよ。分かっていることだもん」
可愛いのは、乙葉だと。
昨日の乙葉は気が動転していたのかよく分からないことを言っていたけれど。
「そんなことな…」
「そんなことあるの」
私はウサギの言葉を遮った。
「そんなこと、あるんだよ。気を遣ってくれて言ってくれるのは嬉しいけれど、私がいちばん良く知ってるの。分かってるんだ、私は可愛いと言われる人ではないんだってこと」
可愛いのは乙葉とディナちゃん。
綺麗なのは藍羅先輩と七星先輩。
そのどちらにも当てはまらないのが、私。
それは誰よりも私がいちばん分かっている。
乙葉は腰に手を当てて、子供に諭すように言った。
「「…はーい」」
可愛くて可憐で、まるで母親みたいな乙葉には、誰も逆らえない。
その時ガラっと教室の扉が開く音がした。
「乙葉ちゃん! 数学の教科書持ってない?」
隣のクラスの子が入ってきて、乙葉に話しかける。
「あるよー!」
そう言って乙葉とその子は廊下にあるロッカーの元へ行ってしまった。
残されて二人になると、
「わ、悪かったな!」
ウサギが突然ぶっきらぼうな口調で言った。その目は明後日の方向を見ている。顔がわずかばかり赤くなっているような気がしたが、訳が分からない。
「…何が?」
何について、「悪かった」のか、もう記憶にない。
「…だ、だから、昨日の…」
昨日、と言われてようやく思い出した。
「あぁ、それ!」
私はパン、と手を叩いた。思いだせてスッキリした。
「って、何でウサギが謝るの?」
すると、ウサギはポカンと顔をあけた。カッコイイと言われるお顔も台無しだ。
「だ、だって、お前…」
「気にしなくていいよ。分かっていることだもん」
可愛いのは、乙葉だと。
昨日の乙葉は気が動転していたのかよく分からないことを言っていたけれど。
「そんなことな…」
「そんなことあるの」
私はウサギの言葉を遮った。
「そんなこと、あるんだよ。気を遣ってくれて言ってくれるのは嬉しいけれど、私がいちばん良く知ってるの。分かってるんだ、私は可愛いと言われる人ではないんだってこと」
可愛いのは乙葉とディナちゃん。
綺麗なのは藍羅先輩と七星先輩。
そのどちらにも当てはまらないのが、私。
それは誰よりも私がいちばん分かっている。