天使のアリア––翼の記憶––
「でもね、私と仲良くしてくれるなら、それでもういいんだ」
彼女達だけじゃない。
ウサギも、北斗先輩も、デューク先輩も。
落ちこぼれな夢巫女で、取り柄といえばピアノしかない私に分け隔てなく接してくれる大切な人達。
彼らと一緒に過ごしていけるなら、もう、それで。
「それだけで、もう、充分」
私は目を閉じた。
それ以上望むことはないと思う。
私は幸せ者だと思うよ。
「俺はそうは思わない」
ウサギの声が聞こえて目を開けると、ウサギは厳しい顔をしていた。少しだけ悲しみを含んだような、複雑な顔。
「俺はお前が可愛くないとか、そんなこと思ったことねぇよ」
その顔を見ていると、何も言えなくなる。
「な…に、それ…」
ウサギが私を真剣な目で見つめる。
冷や汗が背筋を伝う。
その目から逃げたいと思うのに、目を逸らすことができない。
「…ど…う、したの、びっくりするじゃない! 何それ、お世辞?」
あはは、と笑おうとしてみるけれど、ウサギは黙ったまま真剣な顔をしている。
その目は未だ私を捕えている。
何で、そんなことを言うの。
ウサギが、そんなことを言うなんて思ったこともなかった。
焦る私に追い打ちをかけるかのように「世辞じゃねぇよ」とウサギは言った。
「俺はお前が可愛くないなんて思ったことない」
ウサギの目は、まるで私の心まで見透かすのではないかと思うほどだった。
心臓がバクバクと痛くなるほど大きな音を立てている。
速く、嘘だって言ってよ。
『ふはっ、嘘に決まってんだろー? やーい、騙されてやんのー!』って、『まさか本気だと思ったのか? 馬鹿だな月子は。んなわけねぇだろうが』って、いつもみたいに人を小馬鹿にしたような嫌味ったらしい顔して笑ってよ。
いつものウサギに戻ってよ。
ウサギの視線から逃れるように時計を見ると、藍羅先輩との約束の時間の10分前だった。
「ご、ごめん、今から藍羅先輩と練習があるんだ!」
私はウサギから逃げるようにスクールバッグを抱えて教室を飛び出した。
彼女達だけじゃない。
ウサギも、北斗先輩も、デューク先輩も。
落ちこぼれな夢巫女で、取り柄といえばピアノしかない私に分け隔てなく接してくれる大切な人達。
彼らと一緒に過ごしていけるなら、もう、それで。
「それだけで、もう、充分」
私は目を閉じた。
それ以上望むことはないと思う。
私は幸せ者だと思うよ。
「俺はそうは思わない」
ウサギの声が聞こえて目を開けると、ウサギは厳しい顔をしていた。少しだけ悲しみを含んだような、複雑な顔。
「俺はお前が可愛くないとか、そんなこと思ったことねぇよ」
その顔を見ていると、何も言えなくなる。
「な…に、それ…」
ウサギが私を真剣な目で見つめる。
冷や汗が背筋を伝う。
その目から逃げたいと思うのに、目を逸らすことができない。
「…ど…う、したの、びっくりするじゃない! 何それ、お世辞?」
あはは、と笑おうとしてみるけれど、ウサギは黙ったまま真剣な顔をしている。
その目は未だ私を捕えている。
何で、そんなことを言うの。
ウサギが、そんなことを言うなんて思ったこともなかった。
焦る私に追い打ちをかけるかのように「世辞じゃねぇよ」とウサギは言った。
「俺はお前が可愛くないなんて思ったことない」
ウサギの目は、まるで私の心まで見透かすのではないかと思うほどだった。
心臓がバクバクと痛くなるほど大きな音を立てている。
速く、嘘だって言ってよ。
『ふはっ、嘘に決まってんだろー? やーい、騙されてやんのー!』って、『まさか本気だと思ったのか? 馬鹿だな月子は。んなわけねぇだろうが』って、いつもみたいに人を小馬鹿にしたような嫌味ったらしい顔して笑ってよ。
いつものウサギに戻ってよ。
ウサギの視線から逃れるように時計を見ると、藍羅先輩との約束の時間の10分前だった。
「ご、ごめん、今から藍羅先輩と練習があるんだ!」
私はウサギから逃げるようにスクールバッグを抱えて教室を飛び出した。