天使のアリア––翼の記憶––
「いただきます。」

合掌して一礼すると、私は箸を握った。

そして、温かいご飯を口に運ぶ。そして肉じゃがを頬張る。


「おいひー！」

「これ、食べながら喋るんじゃないよ。もう少し品のある食べ方をしな。」

窘められた。

ちゃんと口にあるものを呑み込んでから、

「おばあちゃん、美味しいよ！」

もう一度伝えた。


「それは良かった。」

おばあちゃんがそう言って微笑むものだから、私も自然と笑みがこぼれる。


「ごちそうさまでした。」

合掌をし一礼した。


「おばあちゃんて本当に料理上手だよね。」

「そうかい？」

なんてニコニコしているおばあちゃんを見て、私は不意に思い出した。


「そうだ、おばあちゃんに聞きたいことがあるの。」

「何だい？」

「今日ね、夢を見たの。」


夢、の単語を出した瞬間おばあちゃんの顔がほんの少し強張ったことを私は見逃さなかった。


「どんな夢だったんだい？」

「あのね、天使が出てくる夢だった。」

「天使…？」

おばあちゃんは少し怪訝そうな顔をした。疑い深いと言う方が正しいかもしれない。

「分かる、分かるよ、私自身ファンタジーすぎるでしょ、と思ったもん。まぁ、ただの夢だと思って聞いてて？」

私が言うと、分かったとおばあちゃんはいつも通りの優しい顔をして

「そんなこと思っていないさ。最近の高校生が見る夢があまりにも面白いなと思っただけさ。」

面白い。そうともとれるか。詰まる所おばあちゃんもファンタジーだなと思っているようである。そう思っても仕方のないことではあるが。
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