天使のアリア––翼の記憶––
あー、と不意に乙葉が声をあげた。
「ど、どうしたの?」
そう問いかけるよりも早く、教室の入り口付近にいたクラスメイト達がバタリと倒れた。男女問わず、5名ほど倒れている。
何事かと思って見て彼らに近寄ると、凛とした鈴のような声が聞こえた。
「月子、いいところに来たな」
「…やっぱり、そうでしたか」
はぁ、と溜息が出た。
「藍羅先輩」
その麗しい声の持ち主は、私の憧れである藍羅先輩だった。
尊敬しているのだけれど、憧れではあるのだけれど、人を失神させるのはやめてほしい。今まで一体何人の人が被害になったことだろう。あぁ、その美しさは罪だ。
「え、やっぱりって? 私だって分かってたのか?」
不思議そうな顔をしている藍羅先輩に、大きく頷いた。
「どうしてなんだ?」
「どうしてって…分かるに決まってるじゃないですか」
はぁ、と溜息をついて言葉を続けた。
「こんなに黄色い悲鳴が聞こえているし、それに人が倒れたからですよ」
男女問わず入り口の方を見ながら騒いでいるクラスメイト達。
どこか幸せそうな表情をしている倒れたクラスメイト。
この2つを考えれば美しすぎる人を見て失神したというのは簡単に思いつくことだ。
私の知り合いの美人は、乙葉やウサギ、七星先輩など思いのほか沢山いるのだけれど、人を失神させるほどの美しさを持つのは、藍羅先輩、北斗先輩、そしてデューク先輩くらい。
おまけに北斗先輩はいつもこちらがびっくりするほどのダサイ眼鏡をかけてその美しい顔を隠しているため、彼が超絶美人であるということは知られていない。それ故、人を失神させるようなこともない。
また、デューク先輩が私に用事があるとは考えにくい。
それに万が一私に用事があってこの教室を訪れても、人が倒れるとしても女子だけだ。男子生徒は倒れないだろう。
よって私を呼んだ人物は、藍羅先輩以外に考えられないのだ。
「人が倒れたからあたしが来たって、結びつかないと思うんだが。というか、まず、関係ないことだし」
何で倒れたのかは知らないけど、と藍羅先輩は首を傾げている。
全く、どれだけ鈍感なんだ。呆れてしまう。
まぁ、そういうところも可愛らしいのだけれど。
「それより先輩、どうしたんですか?
用事があって来られたのでしょう?」
私が問いかけると、そうだったと言って藍羅先輩は手を叩いて悪戯っ子のようにニッと笑った。
「昼休み、練習しよう」
想定していなかった言葉に、え、と私は固まった。
「ど、どうしたの?」
そう問いかけるよりも早く、教室の入り口付近にいたクラスメイト達がバタリと倒れた。男女問わず、5名ほど倒れている。
何事かと思って見て彼らに近寄ると、凛とした鈴のような声が聞こえた。
「月子、いいところに来たな」
「…やっぱり、そうでしたか」
はぁ、と溜息が出た。
「藍羅先輩」
その麗しい声の持ち主は、私の憧れである藍羅先輩だった。
尊敬しているのだけれど、憧れではあるのだけれど、人を失神させるのはやめてほしい。今まで一体何人の人が被害になったことだろう。あぁ、その美しさは罪だ。
「え、やっぱりって? 私だって分かってたのか?」
不思議そうな顔をしている藍羅先輩に、大きく頷いた。
「どうしてなんだ?」
「どうしてって…分かるに決まってるじゃないですか」
はぁ、と溜息をついて言葉を続けた。
「こんなに黄色い悲鳴が聞こえているし、それに人が倒れたからですよ」
男女問わず入り口の方を見ながら騒いでいるクラスメイト達。
どこか幸せそうな表情をしている倒れたクラスメイト。
この2つを考えれば美しすぎる人を見て失神したというのは簡単に思いつくことだ。
私の知り合いの美人は、乙葉やウサギ、七星先輩など思いのほか沢山いるのだけれど、人を失神させるほどの美しさを持つのは、藍羅先輩、北斗先輩、そしてデューク先輩くらい。
おまけに北斗先輩はいつもこちらがびっくりするほどのダサイ眼鏡をかけてその美しい顔を隠しているため、彼が超絶美人であるということは知られていない。それ故、人を失神させるようなこともない。
また、デューク先輩が私に用事があるとは考えにくい。
それに万が一私に用事があってこの教室を訪れても、人が倒れるとしても女子だけだ。男子生徒は倒れないだろう。
よって私を呼んだ人物は、藍羅先輩以外に考えられないのだ。
「人が倒れたからあたしが来たって、結びつかないと思うんだが。というか、まず、関係ないことだし」
何で倒れたのかは知らないけど、と藍羅先輩は首を傾げている。
全く、どれだけ鈍感なんだ。呆れてしまう。
まぁ、そういうところも可愛らしいのだけれど。
「それより先輩、どうしたんですか?
用事があって来られたのでしょう?」
私が問いかけると、そうだったと言って藍羅先輩は手を叩いて悪戯っ子のようにニッと笑った。
「昼休み、練習しよう」
想定していなかった言葉に、え、と私は固まった。