天使のアリア––翼の記憶––
「…きょ、今日ですか?」
戸惑う私に、あぁ、と先輩は言った。
すごく驚いたが、これはこちらにも好都合だ。
今日は乙葉やウサギと一緒に過ごせる心境にない。一緒にいると、どうしても苦しみが増してしまう。
けれどウサギや乙葉以外で、昼休みを一緒に過ごせる人物というのはそういないので、一人になることが確実だった。
けれど昼休みという長い時間を一人で過ごさないというのは、余計なことを考えないで済む。
それに、一人で考え事をするとどうしても考えがマイナス方向になってしまうので、その点でもありがたかった。
藍羅先輩の提案に、心が幾分軽くなったような気がした。
「もう先生には許可取ってるんだ。いいだろ?」
ニカっと笑ったその笑顔が爽やかすぎて心臓は止まりかけた。どれだけ一緒にいても、この笑みには勝てない。敵わない。
先輩の笑顔はやっぱり威力が桁違いに大きい。
そんな先輩に私は勿論と言うと、先輩は良かったと言って微笑んだ。まるで向日葵のようだと思った。
その微笑みに癒されていると、先輩を呼ぶ声が聞こえた。
その瞬間、先輩の微笑みが崩れた。眉間にしわを寄せ、嫌悪感丸出しの表情をしている。
「面倒くさいのが来たな…」
ぼそ、と先輩は呟いている。
誰ですか、なんて問わなくてもすぐに分かった。先輩の態度を見れば一目瞭然だし、何より藍羅先輩の名前を呼んだその声に聞き覚えがあった。
その人物と思われる足音が近くなり、その姿も見えてきた。
その人物が藍羅先輩と繰り広げるこれからのやり取りを想像して、私は思わずため息をついた。
走ってきたその人は藍羅先輩を後ろからぎゅっと抱きしめて、甘く優しい声で言った。
「探したよ、藍羅」
「離れろ、馬鹿が」
藍羅先輩の頬が僅かばかり赤く染まる。
「やだ」
「やだじゃないだろ。離れろってば」
「嫌だよ。だって俺、藍羅のこと好きだから」
好き、という言葉を聞いて藍羅先輩の頬はまた赤みを増した。
「あ、あああたしはお、お前のことなんて、す、好きじゃない! っていうか、は、早く離れろって、この馬鹿デュークが!」
あぁ、どうやら彼女のツンデレスイッチが入ったらしい。
藍羅先輩に馬鹿と言われたのは、言うまでもなくデューク先輩だ。
彼のほかに藍羅先輩に堂々と好き、可愛いと堂々と言える人物を私は他に知らない。
ああだこうだと騒ぎながら目の前の美形カップルは二人の世界を創り上げているのだが、私は大して何も思わない。呆れしかないのだ。
こうして目の前で繰り広げられるイチャイチャに慣れてきた。
慣れって恐ろしいものだと心底思う。
戸惑う私に、あぁ、と先輩は言った。
すごく驚いたが、これはこちらにも好都合だ。
今日は乙葉やウサギと一緒に過ごせる心境にない。一緒にいると、どうしても苦しみが増してしまう。
けれどウサギや乙葉以外で、昼休みを一緒に過ごせる人物というのはそういないので、一人になることが確実だった。
けれど昼休みという長い時間を一人で過ごさないというのは、余計なことを考えないで済む。
それに、一人で考え事をするとどうしても考えがマイナス方向になってしまうので、その点でもありがたかった。
藍羅先輩の提案に、心が幾分軽くなったような気がした。
「もう先生には許可取ってるんだ。いいだろ?」
ニカっと笑ったその笑顔が爽やかすぎて心臓は止まりかけた。どれだけ一緒にいても、この笑みには勝てない。敵わない。
先輩の笑顔はやっぱり威力が桁違いに大きい。
そんな先輩に私は勿論と言うと、先輩は良かったと言って微笑んだ。まるで向日葵のようだと思った。
その微笑みに癒されていると、先輩を呼ぶ声が聞こえた。
その瞬間、先輩の微笑みが崩れた。眉間にしわを寄せ、嫌悪感丸出しの表情をしている。
「面倒くさいのが来たな…」
ぼそ、と先輩は呟いている。
誰ですか、なんて問わなくてもすぐに分かった。先輩の態度を見れば一目瞭然だし、何より藍羅先輩の名前を呼んだその声に聞き覚えがあった。
その人物と思われる足音が近くなり、その姿も見えてきた。
その人物が藍羅先輩と繰り広げるこれからのやり取りを想像して、私は思わずため息をついた。
走ってきたその人は藍羅先輩を後ろからぎゅっと抱きしめて、甘く優しい声で言った。
「探したよ、藍羅」
「離れろ、馬鹿が」
藍羅先輩の頬が僅かばかり赤く染まる。
「やだ」
「やだじゃないだろ。離れろってば」
「嫌だよ。だって俺、藍羅のこと好きだから」
好き、という言葉を聞いて藍羅先輩の頬はまた赤みを増した。
「あ、あああたしはお、お前のことなんて、す、好きじゃない! っていうか、は、早く離れろって、この馬鹿デュークが!」
あぁ、どうやら彼女のツンデレスイッチが入ったらしい。
藍羅先輩に馬鹿と言われたのは、言うまでもなくデューク先輩だ。
彼のほかに藍羅先輩に堂々と好き、可愛いと堂々と言える人物を私は他に知らない。
ああだこうだと騒ぎながら目の前の美形カップルは二人の世界を創り上げているのだが、私は大して何も思わない。呆れしかないのだ。
こうして目の前で繰り広げられるイチャイチャに慣れてきた。
慣れって恐ろしいものだと心底思う。