天使のアリア––翼の記憶––
「どういたしまして」
上品な笑みを浮かべたデューク先輩は紳士のような口調で言った。それも違和感なく似合うものだから、さすがデューク先輩だと思った。
「藍羅、君は本当に可愛いね」
嬉しそうに目を細めているデューク先輩に、馬鹿なことをいつまでも言うなと藍羅先輩は顔を真っ赤にして怒った。といっても、顔が赤くなっているのは照れているせいなのだが。
「だ、大体、あたしはデュークにそんなこと言われても全然嬉しくなんてないんだからな!」
真っ赤な顔で睨みつける藍羅先輩に、デューク先輩はにっこり微笑んだ。
「そう。でも、顔を真っ赤にしてそんなこと言われても全然説得力ないよ? それに俺、藍羅のそういうツンデレなところも全部ぜーんぶ大好きなんだよね。だから仮に藍羅が嬉しくないとしても、俺はいつまででも言うよ」
デューク先輩は優しい笑みを浮かべてもう一度、好きだよと言う。藍羅先輩に嫌いと言われてもなお平然な顔をして、愛の言葉を言い続けられるデューク先輩の精神力に私は感動した。
「なっ! だ、だからもうこれ以上あたしをからかうな! も、もう、職員室行ってくる!」
藍羅先輩は逃げるように職員室へ向かった。速足、否、走っている。
「行ってらっしゃーい」
遠くなる背中にデューク先輩は手を振ったが、藍羅先輩は一度も顔をこちらに向けなかった。
その姿がなくなると、デューク先輩はぼそっと呟いた。
「ほんと、藍羅って素直じゃないよね」
そう思わない?と問われて私は頷いた。
「デューク先輩に対してのみだと思いますよ。ツンデレになるのも、こんなに可愛らしくなるのも」
いつもはクールビューティーの言葉そのままにかっこよくて綺麗な先輩だもん。
「俺を意識してくれてるんだ。なんかすごく嬉しい」
デューク先輩はそう言って藍羅先輩が先ほどまで歩いていた廊下を愛おしそうに見つめていた。
顔は笑っているのだけれど、でも、その瞳だけは何だかひどく哀しそうに見えた。
「…どうかしたんですか」
そう問いかけると、デューク先輩は驚いた顔をした。
「どうしたって、何のことかな?」
何を言っているのか分からない、と言いたそうな顔をされたけれど、私には分かっていた。その顔が創り上げられた仮面なんだと。
「何か辛いあったんでしょう? だって、先輩、今すごく哀しそうな顔をしてる」
そう言うと一瞬だけ先輩は目を見開いて、すぐに目を細めて笑った。
「…ほんと、君には驚かされるね。鋭すぎるよ、その洞察力」
参ったなと先輩は苦笑いした。
「で、どうしたんですか」
再度詰め寄ると、先輩はようやく口を開いた。
「…別に、それほど大したことじゃないんだけどね」
私は食い入るように先輩の次の言葉を待った。
いつも藍羅先輩が好きだと言ってばかりいるこの先輩に、どんな辛いことがあるのだろう。
何か役に立てることはないだろうか。
私にできることが、何かないのか。
そんなことを考えて。
上品な笑みを浮かべたデューク先輩は紳士のような口調で言った。それも違和感なく似合うものだから、さすがデューク先輩だと思った。
「藍羅、君は本当に可愛いね」
嬉しそうに目を細めているデューク先輩に、馬鹿なことをいつまでも言うなと藍羅先輩は顔を真っ赤にして怒った。といっても、顔が赤くなっているのは照れているせいなのだが。
「だ、大体、あたしはデュークにそんなこと言われても全然嬉しくなんてないんだからな!」
真っ赤な顔で睨みつける藍羅先輩に、デューク先輩はにっこり微笑んだ。
「そう。でも、顔を真っ赤にしてそんなこと言われても全然説得力ないよ? それに俺、藍羅のそういうツンデレなところも全部ぜーんぶ大好きなんだよね。だから仮に藍羅が嬉しくないとしても、俺はいつまででも言うよ」
デューク先輩は優しい笑みを浮かべてもう一度、好きだよと言う。藍羅先輩に嫌いと言われてもなお平然な顔をして、愛の言葉を言い続けられるデューク先輩の精神力に私は感動した。
「なっ! だ、だからもうこれ以上あたしをからかうな! も、もう、職員室行ってくる!」
藍羅先輩は逃げるように職員室へ向かった。速足、否、走っている。
「行ってらっしゃーい」
遠くなる背中にデューク先輩は手を振ったが、藍羅先輩は一度も顔をこちらに向けなかった。
その姿がなくなると、デューク先輩はぼそっと呟いた。
「ほんと、藍羅って素直じゃないよね」
そう思わない?と問われて私は頷いた。
「デューク先輩に対してのみだと思いますよ。ツンデレになるのも、こんなに可愛らしくなるのも」
いつもはクールビューティーの言葉そのままにかっこよくて綺麗な先輩だもん。
「俺を意識してくれてるんだ。なんかすごく嬉しい」
デューク先輩はそう言って藍羅先輩が先ほどまで歩いていた廊下を愛おしそうに見つめていた。
顔は笑っているのだけれど、でも、その瞳だけは何だかひどく哀しそうに見えた。
「…どうかしたんですか」
そう問いかけると、デューク先輩は驚いた顔をした。
「どうしたって、何のことかな?」
何を言っているのか分からない、と言いたそうな顔をされたけれど、私には分かっていた。その顔が創り上げられた仮面なんだと。
「何か辛いあったんでしょう? だって、先輩、今すごく哀しそうな顔をしてる」
そう言うと一瞬だけ先輩は目を見開いて、すぐに目を細めて笑った。
「…ほんと、君には驚かされるね。鋭すぎるよ、その洞察力」
参ったなと先輩は苦笑いした。
「で、どうしたんですか」
再度詰め寄ると、先輩はようやく口を開いた。
「…別に、それほど大したことじゃないんだけどね」
私は食い入るように先輩の次の言葉を待った。
いつも藍羅先輩が好きだと言ってばかりいるこの先輩に、どんな辛いことがあるのだろう。
何か役に立てることはないだろうか。
私にできることが、何かないのか。
そんなことを考えて。