天使のアリア––翼の記憶––
「…辛いんだよね…」
少し俯いたその顔には、さっきまでの爽やかな笑みが消え、苦しみを映していた。絞り出すような先輩の声はとても切なくて哀しそうで、聞いているこちらも辛くなる。
先輩から滲み出るその苦しみが先輩の心の奥底にある、いつもは蓋をされた感情であるような気がしてならなかった。
「…どうして、ですか?」
遠慮がちに尋ねると、先輩は顔をあげて目を細めて微笑んだ。
とても、とても苦しそうな笑みだった。
「藍羅のことが好きすぎて、辛いんだ」
出てきた言葉に驚き呆れて、私は言葉を失った。
「本気で好きなんだ、藍羅のことが。いつもどんな時も、隣にいたいんだ。片時もそばを離れたくないんだよね。どんな藍羅も見ていたい、一緒に時を、感情を、思い出を共有していたい。そう強く思うのに。それなのに藍羅は照れ屋で離れていってしまうんだ。まぁ、そういうツンデレなところも好きなんだけど。大好きなんだけど。その時の可愛さったらないね。月子ちゃんだって分かるよね? あんなに顔を真っ赤にしちゃって、少し潤んだ目で睨まれたら、もう、俺って幸せだなって…」
あぁ、やめてほしい。惚気話だなんて聞きたくない。
デューク先輩には悪いが、今はそんな気分ではないのだ。
それに辛いことは何なのかと聞いて惚気話を聞かされるなんて、何だか拍子抜けだし、何より心の準備ができていないというか、本当に呆れてしまう。
藍羅先輩が好きすぎて辛いだなんて、それって全く辛いことには入らないのでは、と先輩に言いたくて仕方がなかったが、
「それで、この前藍羅がさ…」
延々と続けられる惚気話に途切れはなく、言うタイミングが見つからない。
ばれないようにこっそり溜息をついたのは、秘密だ。
少し俯いたその顔には、さっきまでの爽やかな笑みが消え、苦しみを映していた。絞り出すような先輩の声はとても切なくて哀しそうで、聞いているこちらも辛くなる。
先輩から滲み出るその苦しみが先輩の心の奥底にある、いつもは蓋をされた感情であるような気がしてならなかった。
「…どうして、ですか?」
遠慮がちに尋ねると、先輩は顔をあげて目を細めて微笑んだ。
とても、とても苦しそうな笑みだった。
「藍羅のことが好きすぎて、辛いんだ」
出てきた言葉に驚き呆れて、私は言葉を失った。
「本気で好きなんだ、藍羅のことが。いつもどんな時も、隣にいたいんだ。片時もそばを離れたくないんだよね。どんな藍羅も見ていたい、一緒に時を、感情を、思い出を共有していたい。そう強く思うのに。それなのに藍羅は照れ屋で離れていってしまうんだ。まぁ、そういうツンデレなところも好きなんだけど。大好きなんだけど。その時の可愛さったらないね。月子ちゃんだって分かるよね? あんなに顔を真っ赤にしちゃって、少し潤んだ目で睨まれたら、もう、俺って幸せだなって…」
あぁ、やめてほしい。惚気話だなんて聞きたくない。
デューク先輩には悪いが、今はそんな気分ではないのだ。
それに辛いことは何なのかと聞いて惚気話を聞かされるなんて、何だか拍子抜けだし、何より心の準備ができていないというか、本当に呆れてしまう。
藍羅先輩が好きすぎて辛いだなんて、それって全く辛いことには入らないのでは、と先輩に言いたくて仕方がなかったが、
「それで、この前藍羅がさ…」
延々と続けられる惚気話に途切れはなく、言うタイミングが見つからない。
ばれないようにこっそり溜息をついたのは、秘密だ。