天使のアリア––翼の記憶––
*
お弁当を食べおわるとすぐに歯磨きを済ませ、愛用の楽譜を手にした私は教室を飛び出した。
走って、走って、走る。
目的の教室の扉に手をかけると同時に教室の中に入る。
「すみません、遅くなりました…!」
切れた息を整えている私に向かって、その人は微笑んだ。
「謝るなよ、誘ったのはこっちなんだから」
藍羅先輩は持っていた本を閉じながら座っていた席を立った。
「それに、遅刻したわけではないんだから」
時間だって決めてなかったんだし、と先輩は笑った。爽やかすぎる笑顔。その爽やかさといえば、デューク先輩にも劣らないほどだった。
サラサラな髪をかき上げるその仕草も、本を持つその姿も、先輩の全てがかっこよくて、綺麗で、麗しくて。
だから、全校生徒が憧れるんだと改めて思った。
それと同時に、デューク先輩がいなければ、やはり藍羅先輩はかっこいい先輩になるんだなと実感した。
何をするにも綺麗で無駄がなく、言葉の一つひとつが、仕草の一つひとつが、爽やかでカッコ良くて上品。本当に完璧なんじゃないかと思う。
でも、デューク先輩といるときだけは、違う。
顔を真っ赤にして、ツンデレで。
ただただ、可愛らしい。
そういう先輩になる。
あぁ、デューク先輩だけだ。
藍羅先輩を"女の子"にするのは。
そして藍羅先輩だけだ。
デューク先輩をあんなに笑顔にするのは。
きっと二人はお互いに大切で大切な存在なのだろう。
ちょうど、私にとってのウサギと乙葉のように。
例えばどちらか1人がいなくなったりしたら、きっと残された方は平気でなんていられなくなる。
そのくらい心の中にある、大事な存在。
…なんて、藍羅先輩は気づいていないのだろうけど。
お弁当を食べおわるとすぐに歯磨きを済ませ、愛用の楽譜を手にした私は教室を飛び出した。
走って、走って、走る。
目的の教室の扉に手をかけると同時に教室の中に入る。
「すみません、遅くなりました…!」
切れた息を整えている私に向かって、その人は微笑んだ。
「謝るなよ、誘ったのはこっちなんだから」
藍羅先輩は持っていた本を閉じながら座っていた席を立った。
「それに、遅刻したわけではないんだから」
時間だって決めてなかったんだし、と先輩は笑った。爽やかすぎる笑顔。その爽やかさといえば、デューク先輩にも劣らないほどだった。
サラサラな髪をかき上げるその仕草も、本を持つその姿も、先輩の全てがかっこよくて、綺麗で、麗しくて。
だから、全校生徒が憧れるんだと改めて思った。
それと同時に、デューク先輩がいなければ、やはり藍羅先輩はかっこいい先輩になるんだなと実感した。
何をするにも綺麗で無駄がなく、言葉の一つひとつが、仕草の一つひとつが、爽やかでカッコ良くて上品。本当に完璧なんじゃないかと思う。
でも、デューク先輩といるときだけは、違う。
顔を真っ赤にして、ツンデレで。
ただただ、可愛らしい。
そういう先輩になる。
あぁ、デューク先輩だけだ。
藍羅先輩を"女の子"にするのは。
そして藍羅先輩だけだ。
デューク先輩をあんなに笑顔にするのは。
きっと二人はお互いに大切で大切な存在なのだろう。
ちょうど、私にとってのウサギと乙葉のように。
例えばどちらか1人がいなくなったりしたら、きっと残された方は平気でなんていられなくなる。
そのくらい心の中にある、大事な存在。
…なんて、藍羅先輩は気づいていないのだろうけど。