天使のアリア––翼の記憶––
「ありがとう。だが、そのためにはどの曲かをやめなければならないんだよな。公演時間のこともあるし。だから月子に相談しようと思って」
そうだったんですか、と私は納得した。
「昼休みと言っても時間は少ない。まずはどの曲をやめるか決めることが先決だな。練習はその後、時間があればやることにしよう」
「そうですね。ちょっと待ってください、今コンサートでする曲をまとめた紙を出しますね!」
楽譜に挟んでいた紙を取り出し、先輩に手渡す。私の手描きだ。
「ありがとう」
そう言って微笑んだ先輩の笑顔は、綺麗で、可憐で、夏の青みたいに透き通った色をしていた。
それはまるで私の心に鎮座する、あの鈍い色をした重たい感情さえ薄れさせるようだった。
心の重量が少し軽くなるような感覚を覚えた。
「いえ、後輩の務めですから」
ふと浮かんだ言葉をかき消すように、私はそう言って少し笑った。
本当は別の言葉を言いたかった。
言いたくて、でも、言えなかった。
絶対に言ってはいけないと思った。
"心を軽くしてくれてありがとう"
そんな言葉、どの口が言えるの。
そんな言葉、私なんかが言っていいと思ってるの。
幼馴染を傷つけた、この私が。
また私の心を罪悪感が占拠する。
自業自得だと自分でも思う。
でもそう思う心のどこかで、叫んでる。
助けて、と。
苦しみから逃れたいと切望している心に気づいているけれど、私はその上で無視する。
私は私を助けるわけにはいかない。
私はまだ、私を許してはいけない。
あの時のウサギの笑顔が脳裏を過り、胸を痛いほど締め付ける。
私は許されてはいけない。
私はウサギを傷つけた、罪人、なのだから。
そうだったんですか、と私は納得した。
「昼休みと言っても時間は少ない。まずはどの曲をやめるか決めることが先決だな。練習はその後、時間があればやることにしよう」
「そうですね。ちょっと待ってください、今コンサートでする曲をまとめた紙を出しますね!」
楽譜に挟んでいた紙を取り出し、先輩に手渡す。私の手描きだ。
「ありがとう」
そう言って微笑んだ先輩の笑顔は、綺麗で、可憐で、夏の青みたいに透き通った色をしていた。
それはまるで私の心に鎮座する、あの鈍い色をした重たい感情さえ薄れさせるようだった。
心の重量が少し軽くなるような感覚を覚えた。
「いえ、後輩の務めですから」
ふと浮かんだ言葉をかき消すように、私はそう言って少し笑った。
本当は別の言葉を言いたかった。
言いたくて、でも、言えなかった。
絶対に言ってはいけないと思った。
"心を軽くしてくれてありがとう"
そんな言葉、どの口が言えるの。
そんな言葉、私なんかが言っていいと思ってるの。
幼馴染を傷つけた、この私が。
また私の心を罪悪感が占拠する。
自業自得だと自分でも思う。
でもそう思う心のどこかで、叫んでる。
助けて、と。
苦しみから逃れたいと切望している心に気づいているけれど、私はその上で無視する。
私は私を助けるわけにはいかない。
私はまだ、私を許してはいけない。
あの時のウサギの笑顔が脳裏を過り、胸を痛いほど締め付ける。
私は許されてはいけない。
私はウサギを傷つけた、罪人、なのだから。