天使のアリア––翼の記憶––


頭上をものすごい速さで通過していく物体。

私達はそれを必死で避ける。

私達の数メートル向こうには、人工的な物質で構成されているそれを操り、それを我らにぶつけようとしてくる敵がいる。

奴らが持っているのは、それに当たった瞬間、こちらのセカイからいなくなってしまうというとんでもなく強力な兵器だ。

…なんて恐ろしい。

「月子!」

仲間が私の名前を呼ぶ。

同時に敵が放った攻撃が私に当たろうとしていた。

仲間の呼ぶ声で敵の攻撃を察知した私は間一髪でそれを避けて、攻撃してきた人物を見る。

奴らは舌打ちをすると、また別の人物を攻撃のターゲットにしていた。

ターゲットは私の仲間の一人でクラスメイトの、ある女の子だった。

奴らの攻撃が彼女にヒットし、彼女は攻撃に耐えきれず倒れてしまった。彼女はか弱いので、特に怪我が心配される。

「大丈夫!?」

駆け寄ろうとするが、また奴らが操るそれが私と彼女の間を通過していく。

それを避けるのに精いっぱいで、彼女に近寄れない。

「私は大丈夫。でも、もう無理かも。私の分も頑張れ、月子!」

彼女はそう言い残して私達の元を去った。

彼女の意思を、彼女の功績を、私は忘れはしない。

おのれ、我が同士を、よくも…!

私は奴らをギッと睨みつける。

奴らの目には私とその仲間は同じ人間ではなく的として映っている。

次の瞬間、兵器を持った敵が私をとらえた。

まるで体が金縛りにあったように動かなくなる。

恐怖で、だ。

奴は薄ら笑みを浮かべ、人体に重大な危害を加えうるそれを手に持ち、今、私に攻撃をしかけようとしている。

どうする。

攻撃が直撃すれば、私はこちらのセカイを去ることになる。

それは避けなければいけない。

まだ私は倒れるわけにはいかない。

彼女の敵を討つまでは、まだ彼女のいるあちらのセカイに行くわけにはいかないのだ。


何としてもこの戦いに勝たねば。


ギッと睨みつけ、私は構えた。


さぁ、どこからでも攻撃をしてくればいい。


私はきっと避けてみせる。



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