天使のアリア––翼の記憶––
敵が、私めがけて攻撃をしかけた。

凄い速さで飛んでくるそれを避ける。

その程度の攻撃をかわせないと思ったのだろうか。

私をナメるのも大概にしてほしい。

そう思ったときだった。

「うっ…!」

背中に鈍い痛みが走った。同時に体中を駆け巡る、敗北感と絶望感。

攻撃が、当たった…?

この私に、か…?

私は、負けたのか…?

何の役に立たないまま、負けたのか…?

私に当たったとみられる奴らが持っていた攻撃道具ともいえるそれが転がっている。

それが私に負けたのだと伝えた。

私は膝から崩れ落ちた。

「さっさと行きなよ」

私に攻撃をした敵は後ろからそう言った。

振り返るとその人物は薄ら笑いを浮かべていた。

どうやら彼女は、私が避けたその攻撃道具をキャッチし、私に再度攻撃を仕掛けたようだ。所謂カウンターとかいうやつらしい。

悔しさを堪えて私は彼女が待つあちらのセカイへと旅立った。

先ほど私を応援してくれた彼女の元へ駆け寄る。

「ごめんね、あっけなくやられちゃった」

「いや、月子は頑張ったよ」

それにさ、と彼女は笑った。


「私達にも復活のチャンスはあるよ」


「そうだね」


そう言っているうちに、仲間が敵に攻撃しようとしていた。

奴らは皆それを華麗に避け、私達の方に攻撃道具がやってきた。

私はすぐさまそれを拾い上げると同時に敵に投げつけた。カウンター攻撃はスピードが命だ。

先ほどのお返しである。

私を敵に回してただで済まないと、思い知ればいい。

私の攻撃は、運良く先ほど私をここへ追いやった人物に当たった。

借りは返した。

そう心の中で呟いて、私はガッツポーズをした。

「月子、凄い!」

「ありがと。でも運が良かっただけなんだけどね」

そう言って誤魔化すけれど、内心飛び上がって喜んでいた。

「月子、すごーい!」

我が親友、乙葉の声も聞こえてきた。

乙葉に向かってブイサインを見せる。

まだ、私はやれるはずだ。

「先に戻ってるね。あっちで待ってるよ」

隣にいた彼女に微笑むと、私は駆け足で元いたセカイに戻った。

「月子、ナイス!」

仲間は口々に私を褒め称えて私を迎え入れてくれた。

「皆、油断するなよ!タイムリミットまであと少しだ。皆で生き残るよ!」

「おう!」

残った仲間の心を一つに、ただただ相手の攻撃を避けることに専念した。

巡り巡ってきたチャンス、無駄にはしない。



__そうして時は過ぎて、タイムリミットを告げる機械音が鳴り響いた。





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