天使のアリア––翼の記憶––
*
波乱の球技大会から数日。
球技大会では、ウサギが出場した男子バレーが優勝、乙葉の出場した女子バスケが準優勝、学年総合準優勝という華々しい結果で幕を閉じた。
因みに、学年総合優勝したのは、乙葉を怪我させた、あの3組だった。
球技大会という1学期の一大イベントも終わり、生徒たちは1年を通して最大のイベントである夏休みを待ち遠しく待っている。
かく言う私はというと、夏休み前に、かぐや会館で行われる藍羅先輩とのコンサートのために日々練習に励んでいる。
昨日もスパルタな先輩の練習に付き合ったために疲労感が抜け切れていない。
全く、あれだけ長い時間弾いても全然痛くならない自分の手に感動する。
それよりも、乙葉の足の怪我が心配だ。
「乙葉、足、大丈夫?」
隣の席に座る乙葉の足元を見ながら私は尋ねた。
球技大会の翌日、乙葉は足に包帯を巻いていた。
乙葉の怪我は捻挫で済んだようだが、それを聞いても心配で心配でしかたなかった。
「大丈夫だよー。もー、月子は心配性なんだからー」
乙葉はいつもと同じようにふんわり笑っていたが、私は笑えなかった。
怪我をして歩けなくなった乙葉なんて見たことがなかった。
それに、ウサギが乙葉をお姫様抱っこしたことを思いだすと、どうしても笑えなかった。
あぁ、自分が嫌になる。
あの行為が、ウサギのあの行為が、嫌だなんて思ってしまう。
大体、お姫様抱っこの件は、乙葉は意図しない怪我のせいで歩けなかったんだから、至極当然のことなのだ。
それに乙葉はウサギが好きなのだから、寧ろ乙葉とウサギが接近したことを、幼馴染であり親友である私は、喜んであげるべきなのではないか。
それなのに。
頭では理解できているのに、それができない。
自分の自己中具合に嫌気がさす。
「月子ー?」
乙葉が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「どうかしたのー?」
「え?ううん、何でもないよ!」
私は咄嗟に笑顔を張り付けて笑った。
こんなに醜い考え方をしていると乙葉に悟られたくないと思った。
そんな自分が、相当醜いとも思った。
繰り返される自己嫌悪。
自己嫌悪に陥る自分が更に嫌いになって、また自己嫌悪は深まる。
始まる悪循環。
このワープを切るには、まだ時間がかかりそうだ。
けれどワープを切る唯一の方法を、私は何となく分かっていた。
ウサギに私の気持ちを伝えること。
そうすれば、ワープは切れる。
そうしたらきっと、私は私を認められるはずだから。
波乱の球技大会から数日。
球技大会では、ウサギが出場した男子バレーが優勝、乙葉の出場した女子バスケが準優勝、学年総合準優勝という華々しい結果で幕を閉じた。
因みに、学年総合優勝したのは、乙葉を怪我させた、あの3組だった。
球技大会という1学期の一大イベントも終わり、生徒たちは1年を通して最大のイベントである夏休みを待ち遠しく待っている。
かく言う私はというと、夏休み前に、かぐや会館で行われる藍羅先輩とのコンサートのために日々練習に励んでいる。
昨日もスパルタな先輩の練習に付き合ったために疲労感が抜け切れていない。
全く、あれだけ長い時間弾いても全然痛くならない自分の手に感動する。
それよりも、乙葉の足の怪我が心配だ。
「乙葉、足、大丈夫?」
隣の席に座る乙葉の足元を見ながら私は尋ねた。
球技大会の翌日、乙葉は足に包帯を巻いていた。
乙葉の怪我は捻挫で済んだようだが、それを聞いても心配で心配でしかたなかった。
「大丈夫だよー。もー、月子は心配性なんだからー」
乙葉はいつもと同じようにふんわり笑っていたが、私は笑えなかった。
怪我をして歩けなくなった乙葉なんて見たことがなかった。
それに、ウサギが乙葉をお姫様抱っこしたことを思いだすと、どうしても笑えなかった。
あぁ、自分が嫌になる。
あの行為が、ウサギのあの行為が、嫌だなんて思ってしまう。
大体、お姫様抱っこの件は、乙葉は意図しない怪我のせいで歩けなかったんだから、至極当然のことなのだ。
それに乙葉はウサギが好きなのだから、寧ろ乙葉とウサギが接近したことを、幼馴染であり親友である私は、喜んであげるべきなのではないか。
それなのに。
頭では理解できているのに、それができない。
自分の自己中具合に嫌気がさす。
「月子ー?」
乙葉が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「どうかしたのー?」
「え?ううん、何でもないよ!」
私は咄嗟に笑顔を張り付けて笑った。
こんなに醜い考え方をしていると乙葉に悟られたくないと思った。
そんな自分が、相当醜いとも思った。
繰り返される自己嫌悪。
自己嫌悪に陥る自分が更に嫌いになって、また自己嫌悪は深まる。
始まる悪循環。
このワープを切るには、まだ時間がかかりそうだ。
けれどワープを切る唯一の方法を、私は何となく分かっていた。
ウサギに私の気持ちを伝えること。
そうすれば、ワープは切れる。
そうしたらきっと、私は私を認められるはずだから。