天使のアリア––翼の記憶––
「二人とも今日も朝から元気ねー?」

ニコニコしているのは隣の席の我が親友、綾崎乙葉(あやさき おとは)。

藍羅先輩を学校のマドンナと例えるのであれば、彼女は学校のアイドルのような存在である。


雪のように白い肌と桜色の唇、胡桃色の長いサラサラとした髪の毛が特徴的で、ハチマキのように頭にリボンを巻き、頭のてっぺんでリボン結びをしている。そういうところが益々彼女の可憐さを増幅させているのだ。今日のリボンはさくらんぼ色らしい。とても似合っている。いや、似合いすぎている。

おまけにスラッと長い脚。スタイルが良すぎる。

全体的に色素が薄く、その感じが守ってあげたいと思ってしまう、美術部所属の文化系美少女。

おまけにいつでもふわふわしている癒し系。私も毎日癒されている。


この子はね、兎にも角にもモテるんですよ!もう嫌味かというほどに。

藍羅先輩ともいい勝負なんだよね。だけど何故か彼氏は作らないらしい。理由を聞いても教えてくれなかったんだけどね。好きな人でもいるのかなー?


「乙葉、誤解だよ。元気なのはこいつだけだから」

私は前を指差した。

私は今朝運動部でもないのに走って疲れた。決して元気じゃない。あ、因みに私は帰宅部所属。放課後は色々と忙しくてね。そのことについてはまた説明します。

「はいはい、そういうことにしておいてあげるー」

相変わらずふわふわしている我が親友。

そういうところに、この月子、癒されてきましたよ。だけどね乙葉さん…


貴女、私の意見分かってないよね!? 絶対分かってないよね!?


「はーい、席に着けー。」

そこに担任が入って来るものだから、私は乙葉を納得させるのを諦めるしかなかった。







「ねぇ月子知ってるー?」

休み時間になると、乙葉が可愛すぎる笑顔を浮かべて話しかけてきた。

「何を?」

「あの転校生の話か?」

ひょっこり話に入ってきたウサギ。男子なのに目が大きくクリクリしているところが益々ウサギっぽい。

「転校生?何それ。」
< 31 / 351 >

この作品をシェア

pagetop