天使のアリア––翼の記憶––

「お前、転校生も知らねーのかよ？いいかよく聞け、転校生っていうのは…」

「いや、転校生の定義は知ってるから！いくらなんでもそこまで阿呆じゃないから！」

この月子を馬鹿にし過ぎよ！


「誰が転校して来たの？って意味だ、この阿呆ウサギヤロー！」


ギッとウサギを睨んでやった。ウサギを前にするといつも喧嘩腰になってしまう。


「てめっ！」


ウサギが反論しかけたその時、

「はいはい、二人ともそこまでねー。」

乙葉がふんわりと仲介に入る。その声で私もウサギもすっかり脱力してしまった。

いつもいつもこうだ。幼いころからずーっと、私とウサギが喧嘩しそうになった時に、いつも止めに入るのは乙葉なのだ。そして彼女はそのふんわりとした空気感で、この険悪なムードをいつもぶち壊してくれるのである。

乙葉の雰囲気には私もウサギも、誰も勝てない。乙葉最強説がクラスに出回っていることを本人は知らないだろう。


「それで、誰なの？」

ウサギを無視して相変わらずニコニコしている乙葉さんに話しかける。彼女の周りにはまるで花が咲いているようだ。本当に愛らしい。


「日向(ひなた)デュークさんって言うんだってー。」

「日向…デュークって…名前からしてやっぱりハーフさん？」

「うん、そうみたいー。」


凄いね、流石グローバル化だね！こんなとこまでグローバル化してるとは、いやー、時代の流れって早いねぇ！


「月子大丈夫ー？こっちに戻って来てねー？」

その声で現代に戻ってくる。


「凄くカッコイイって皆言ってるよー？皆知ってるよー？」

「え、皆知ってるの？」

嘘、私だけ知らなかったの？ちょっとショック…

「まぁ知らないのはお前くらいだろうな。」

「本当に知らないとは思わなかったよー。」


グサっと心に刺さった二本の矢。二人の攻撃がダイレクトに私にダメージを与える。効果は抜群だ。


そんな私に気づいたらしいウサギが私に笑いかけた。