天使のアリア––翼の記憶––
「貴様ごときに何が分かる?!くだらぬ差別が人を、あいつを殺した!その無念さ、惨めさ、悲しみ、憎しみ…到底貴様には理解できまい!」
彼の言う通りだった。
私は彼ではない。
だから私は過去の彼の感情を理解することはできない。
彼の感情は、彼だけのもの。
「デューク!」
苛立っているような大きな声で彼は息子の名を呼んだ。
それまで俯いて黙り込んでいたデューク先輩の肩が微かにぴくりと震えた。
けれどデューク先輩は俯いたまま動かない。
「デューク、願いを叶えられる者はお前だけだ。よって私は命じる!私の代わりに歌姫に願い、我が願いを叶えろ!」
父親が厳しい言葉で彼を責めても、命令をしても、動かない。
「デューク、聞いているのか!」
竹取会のトップである彼は怒りを露わにしているが、デューク先輩は依然下を向いたままだった。
「……さい」
小さい、小さい、呟くような掠れたデューク先輩の声が聞こえた。
「デューク、我が願いを…」
「うるさいんだって!」
デューク先輩は、今まで溜め込んだ思いを吐き出すように叫んだ。
「世界の頂点に立つとか、いつまでふざけているんだよ! いつまで過去にとらわれているんだよ! 母さんは亡くなったんだ、もう二度と戻ってはこない。何があっても、帰ってこない!
いい加減、現実に目を向けてよ!」
彼の父親は目を見開いた。
「仮に貴方が世界の頂点に立っても、母さんはきっと喜ばない。幸せにもならない。母さんはそんなことを望んではいない。母さんが望んだことは、家族が幸せに暮らすこと、それだけだ!それは貴方も知っているでしょ?それなのに、どうして貴方は自分の愛する人を悲しませるようなことをするんだよ!」
言葉は真っ直ぐだった。
あまりにも真っ直ぐで、まるで弓矢のようにぐさりと胸に刺さるような鋭さも伴っていた。
「母さんだけじゃない。貴方が世界の頂点に立って、幸せになれる人はいない。
貴方は、竹取会は、今まで自分たちに差別をしてきた人達のことを差別するようになるだろう。皆には長年の恨み辛みがあるからね。そしてそれは更なる差別で苦しむ人々を生むだけだ!
どうしてそれが間違っていると分からない?貴方が世界の頂点に立つことで、貴方が心底嫌っていた差別が更に拡大するんだよ!
他人を不幸にさせるような願いは叶えるべきではない、叶えてはならないんだ!」
青と黄金はしっかり前を見据えていた。
澄んだ色をした瞳には、もう迷いはないと感じられた。
「デューク、貴様、ふざけるのもいい加減に…」
「俺はもう、貴方の言いなりにはならない」
デューク先輩は父親を一瞥すると、藍羅先輩を見た。
彼の言う通りだった。
私は彼ではない。
だから私は過去の彼の感情を理解することはできない。
彼の感情は、彼だけのもの。
「デューク!」
苛立っているような大きな声で彼は息子の名を呼んだ。
それまで俯いて黙り込んでいたデューク先輩の肩が微かにぴくりと震えた。
けれどデューク先輩は俯いたまま動かない。
「デューク、願いを叶えられる者はお前だけだ。よって私は命じる!私の代わりに歌姫に願い、我が願いを叶えろ!」
父親が厳しい言葉で彼を責めても、命令をしても、動かない。
「デューク、聞いているのか!」
竹取会のトップである彼は怒りを露わにしているが、デューク先輩は依然下を向いたままだった。
「……さい」
小さい、小さい、呟くような掠れたデューク先輩の声が聞こえた。
「デューク、我が願いを…」
「うるさいんだって!」
デューク先輩は、今まで溜め込んだ思いを吐き出すように叫んだ。
「世界の頂点に立つとか、いつまでふざけているんだよ! いつまで過去にとらわれているんだよ! 母さんは亡くなったんだ、もう二度と戻ってはこない。何があっても、帰ってこない!
いい加減、現実に目を向けてよ!」
彼の父親は目を見開いた。
「仮に貴方が世界の頂点に立っても、母さんはきっと喜ばない。幸せにもならない。母さんはそんなことを望んではいない。母さんが望んだことは、家族が幸せに暮らすこと、それだけだ!それは貴方も知っているでしょ?それなのに、どうして貴方は自分の愛する人を悲しませるようなことをするんだよ!」
言葉は真っ直ぐだった。
あまりにも真っ直ぐで、まるで弓矢のようにぐさりと胸に刺さるような鋭さも伴っていた。
「母さんだけじゃない。貴方が世界の頂点に立って、幸せになれる人はいない。
貴方は、竹取会は、今まで自分たちに差別をしてきた人達のことを差別するようになるだろう。皆には長年の恨み辛みがあるからね。そしてそれは更なる差別で苦しむ人々を生むだけだ!
どうしてそれが間違っていると分からない?貴方が世界の頂点に立つことで、貴方が心底嫌っていた差別が更に拡大するんだよ!
他人を不幸にさせるような願いは叶えるべきではない、叶えてはならないんだ!」
青と黄金はしっかり前を見据えていた。
澄んだ色をした瞳には、もう迷いはないと感じられた。
「デューク、貴様、ふざけるのもいい加減に…」
「俺はもう、貴方の言いなりにはならない」
デューク先輩は父親を一瞥すると、藍羅先輩を見た。