天使のアリア––翼の記憶––
「デューク…」
「藍羅、本当に叶えてくれる?」
デューク先輩は薄く笑って尋ねた。
「俺の願いを、叶えてくれる?」
「デュークの願いなら」
藍羅先輩は笑って答えた。
「それで、デュークの願いは?」
「俺の、願いは…」
デューク先輩は口を噤(つぐ)んで、しばらく目を閉じた。
そして再びその目が開かれると、真っ直ぐに藍羅先輩を見つめて言った。
「俺の願いは、竹取会の消滅だ」
小さなその声は少し掠れていて、拳は固く握られていた。
「竹取会は消滅しなければならない。藍羅だって分かったでしょう?竹取会は一般人に対して強い恨みを持つ人の集まりなんだ。彼らは力を手に入れるためにどんな手段に出るか、俺にも予想できない。
それに竹取会は今までに数え切れないほど沢山の罪を犯してきた。俺もこの組織にいたから同罪だ。現に月読を死に追いやったのは、間違いなくこの俺だから」
デューク先輩は苦しい表情を見せた。
母の死を仕方ないことと言っていた人物と同じだとは到底思えないほど、罪悪感に濡れた表情をしていた。
きっとこの顔は仮面じゃない。
よく分からない根拠があった。ただ、仮面じゃなくて本心から言っているのだという確信があった。
デューク先輩は母の死を悼んでくれている。
それが少しだけ嬉しいような気もして、心の底がぽうっと暖かくなるような心地がした。
「今まで犯してきた罪は余りにも大きくて、どうやって償えばいいのか、どうやったら償ったことになるのか、俺には分からない。分からないけれど、でも、この組織は確実に重い罪を重ねていくことは分かっている。
だから俺は願うよ。この不幸な組織の終わりを」
瞳の奥が少し悲しい色をしているように見えた。
けれどそれを見せないように、隠すように、先輩は少し早口で語った。
自分が言い出した願いを叶えることも罪に対する償いだと言い聞かせるような口調だった。
それが、悲しくて、切なくて、私は目を逸らした。
その時ふと、今朝見た誰かの過去夢が脳裏をよぎった。
「藍羅、本当に叶えてくれる?」
デューク先輩は薄く笑って尋ねた。
「俺の願いを、叶えてくれる?」
「デュークの願いなら」
藍羅先輩は笑って答えた。
「それで、デュークの願いは?」
「俺の、願いは…」
デューク先輩は口を噤(つぐ)んで、しばらく目を閉じた。
そして再びその目が開かれると、真っ直ぐに藍羅先輩を見つめて言った。
「俺の願いは、竹取会の消滅だ」
小さなその声は少し掠れていて、拳は固く握られていた。
「竹取会は消滅しなければならない。藍羅だって分かったでしょう?竹取会は一般人に対して強い恨みを持つ人の集まりなんだ。彼らは力を手に入れるためにどんな手段に出るか、俺にも予想できない。
それに竹取会は今までに数え切れないほど沢山の罪を犯してきた。俺もこの組織にいたから同罪だ。現に月読を死に追いやったのは、間違いなくこの俺だから」
デューク先輩は苦しい表情を見せた。
母の死を仕方ないことと言っていた人物と同じだとは到底思えないほど、罪悪感に濡れた表情をしていた。
きっとこの顔は仮面じゃない。
よく分からない根拠があった。ただ、仮面じゃなくて本心から言っているのだという確信があった。
デューク先輩は母の死を悼んでくれている。
それが少しだけ嬉しいような気もして、心の底がぽうっと暖かくなるような心地がした。
「今まで犯してきた罪は余りにも大きくて、どうやって償えばいいのか、どうやったら償ったことになるのか、俺には分からない。分からないけれど、でも、この組織は確実に重い罪を重ねていくことは分かっている。
だから俺は願うよ。この不幸な組織の終わりを」
瞳の奥が少し悲しい色をしているように見えた。
けれどそれを見せないように、隠すように、先輩は少し早口で語った。
自分が言い出した願いを叶えることも罪に対する償いだと言い聞かせるような口調だった。
それが、悲しくて、切なくて、私は目を逸らした。
その時ふと、今朝見た誰かの過去夢が脳裏をよぎった。