天使のアリア––翼の記憶––
そういえばあれは誰の過去だったのだろう。

きっと私が知っている人物。そんな気がする。


はたとその人物が思い立ったと同時に、ずっと思い出せずにいたあの花言葉も思い出した。


夢と花言葉が混ざり合うように私を答えへと導く。


私はようやくデューク先輩の願いに気づいた。

同時に胸が苦しくなった。


彼の願いは、他に例えようがないほど


愛しくて、重い。



「…違うでしょう?」



皆が一斉に私を見た。

何を言い出すつもりだと、驚いた顔をしている。

けれど私は気に留めなかった。


言わなければ後悔すると全身が予感している。


デューク先輩の本当の願いは、竹取会の消滅なんて、そんなことじゃない。


「先輩の願いは、ディナちゃんの病気が治ること。違いますか?」



私の言葉を聞いたデューク先輩は目を見開いた。



「先輩はディナちゃんに贈り物をした。それはディナちゃんと約束したも同然だった。約束というよりは、誓いに近いのかもしれない」


先輩からディナちゃんへの贈り物。

Tree of Life、すなわち、いのちの木の写真。

あれは確かに杉の木だった。





杉の木の花言葉は




"あなたのために生きる"





「先輩は今までずっと、ディナちゃんのために仕事をこなしてきたんでしょう?それだけを心に繋ぎ止めていたのでしょう?」


デューク先輩は昔からずっと心に誓ってきたのだろうと思う。

あの過去夢の主人公はディナちゃんで、おにいちゃんはデューク先輩。遊んでいたのはきっといのちの木の下だ。

あの時の男の子の発言や表情を考えると、彼の苦労がどれほどの大きなものだっただろうと思う。

それでも彼は一つの希望のために生きてきた。


あの時の苦しそうな顔も、写真も、夢で聞いた最後の言葉も、何もかも全てがこの願いに繋がる。
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