天使のアリア––翼の記憶––
「…あぁ、君は、夢巫女の力で分かったんだね。君はすごいよ」
デューク先輩はふわりと儚く笑って、でも、と言葉を付け足した。
「月子ちゃんの言う通りだ。ディナの病気が治ること、それは俺がどんなことがあっても叶えたい願いだ。
ディナは母と同じ、不治の病を患っている。こんな小さな子が、それもこの世にたった一人の大切な妹が、重い病気で苦しんでいるのを黙って見過ごせるはずがない。
それに、記憶の中の、病を患っていない元気なディナを思い出すといても立ってもいられなくなるんだ。もう一度元気なディナを見たくて仕方がないんだ。
ディナの病気を何とかして治してやりたい、そのためなら何だってすると、これまでそう思って生きてきた。
けれど俺は、あまりに多くの罪を犯してしまった。こんなどうしようもない俺には、本当の願いを叶える資格はないんだよ」
先輩は自分を戒めるようにそう言った。
「じゃあ、そのためにディナちゃんが苦しみ続けていいんですか?!」
私はほとんど叫んでいた。
先輩の言っている意味が分からない。
「そんなわけない。けれど…」
「罪とか罰とか、資格があるとかないとか、それよりもっと大切なことがあるでしょう?! どうしてそれに気づかないんですか?! 失ってからじゃ遅いんですよ!」
私の言葉にデューク先輩は目を見開いた。
彼にはきっと私の想像するよりももっと大きくて苦しい罪悪感が乗っかっていると思った。
私はそれを背負いすぎだとも、もっと背負えとも言わないけれど、失くしてから後悔することはしてほしくないと思ったし、ディナちゃんを救ってほしいとも思った。
「…あのさ、環。2つの願い事って叶えられるものかな?」
突然藍羅先輩の声がした。
ハッとそちらを向くと、環は顔をしかめていた。
「何を言い出すんですか」
「2つ叶えたいなって思って」
へへ、と悪戯っ子のような笑顔を見せる藍羅先輩に、環は怒った。
「馬鹿なこと言わないでください!ただでさえ1つの願い事を叶えるととんでもないエネルギーの余波が発生して、周りに危害を加える恐れがあるというのに、2つの願いを叶えるなんてことをしたら、その計り知れない余波で、どんなことが起こるか…」
環はその中性的な美しい顔立ちが台無しになるほど、眉間にシワを寄せていた。
「1つの願いを叶えるなら、そのために辺りに危険を及ぼそうと、貴女自身には全く関係のないことです。けれど、2つも願いを叶えるとなると、そうもいかない。願いを叶える貴女自身がいちばん危険な目にあうでしょう」
「あぁ、そう。で、具体的にはどんなことが起こるんだ?」
さらっと流すような藍羅先輩の口ぶりに、環は怒りを露わにした。
「あぁ、そう。で済まされるようなことではないですよ!分かっているのですか?私は貴女のことを思ってですね!」
「あーハイハイ、お前もうるさい奴だな!分かったから早く教えて」
絶対分かってないですねと環は溜息を吐いて、渋々答えた。
デューク先輩はふわりと儚く笑って、でも、と言葉を付け足した。
「月子ちゃんの言う通りだ。ディナの病気が治ること、それは俺がどんなことがあっても叶えたい願いだ。
ディナは母と同じ、不治の病を患っている。こんな小さな子が、それもこの世にたった一人の大切な妹が、重い病気で苦しんでいるのを黙って見過ごせるはずがない。
それに、記憶の中の、病を患っていない元気なディナを思い出すといても立ってもいられなくなるんだ。もう一度元気なディナを見たくて仕方がないんだ。
ディナの病気を何とかして治してやりたい、そのためなら何だってすると、これまでそう思って生きてきた。
けれど俺は、あまりに多くの罪を犯してしまった。こんなどうしようもない俺には、本当の願いを叶える資格はないんだよ」
先輩は自分を戒めるようにそう言った。
「じゃあ、そのためにディナちゃんが苦しみ続けていいんですか?!」
私はほとんど叫んでいた。
先輩の言っている意味が分からない。
「そんなわけない。けれど…」
「罪とか罰とか、資格があるとかないとか、それよりもっと大切なことがあるでしょう?! どうしてそれに気づかないんですか?! 失ってからじゃ遅いんですよ!」
私の言葉にデューク先輩は目を見開いた。
彼にはきっと私の想像するよりももっと大きくて苦しい罪悪感が乗っかっていると思った。
私はそれを背負いすぎだとも、もっと背負えとも言わないけれど、失くしてから後悔することはしてほしくないと思ったし、ディナちゃんを救ってほしいとも思った。
「…あのさ、環。2つの願い事って叶えられるものかな?」
突然藍羅先輩の声がした。
ハッとそちらを向くと、環は顔をしかめていた。
「何を言い出すんですか」
「2つ叶えたいなって思って」
へへ、と悪戯っ子のような笑顔を見せる藍羅先輩に、環は怒った。
「馬鹿なこと言わないでください!ただでさえ1つの願い事を叶えるととんでもないエネルギーの余波が発生して、周りに危害を加える恐れがあるというのに、2つの願いを叶えるなんてことをしたら、その計り知れない余波で、どんなことが起こるか…」
環はその中性的な美しい顔立ちが台無しになるほど、眉間にシワを寄せていた。
「1つの願いを叶えるなら、そのために辺りに危険を及ぼそうと、貴女自身には全く関係のないことです。けれど、2つも願いを叶えるとなると、そうもいかない。願いを叶える貴女自身がいちばん危険な目にあうでしょう」
「あぁ、そう。で、具体的にはどんなことが起こるんだ?」
さらっと流すような藍羅先輩の口ぶりに、環は怒りを露わにした。
「あぁ、そう。で済まされるようなことではないですよ!分かっているのですか?私は貴女のことを思ってですね!」
「あーハイハイ、お前もうるさい奴だな!分かったから早く教えて」
絶対分かってないですねと環は溜息を吐いて、渋々答えた。