天使のアリア––翼の記憶––
「…環さんと言ったかしら? 1つ質問があるのだけど」
七星先輩がそれまで閉ざしていた口を開けた。
「何でしょう?」
「空が割れ、大地が砕けたのは、いつだったのかしら?」
なんだか答えを恐れているような口ぶりだった。
環はジッと七瀬先輩を見ると言った。
「…貴女は私達と同じ、別の世界の住人ですね」
「そうよ。私は魔法使いだもの」
七瀬先輩は隠すこともなく即答した。
「魔法使いである貴女の世界とこの世界、そして私達の世界はどれも平行世界なのです。そしてそのことをいちばん理解しているのは私達の世界の者。この世界で平行世界のことを知る者はほとんどいませんが、貴女の世界ならば知る者も少なくはないでしょう」
環の言葉に七星先輩は頷いた。
「そうね、知っている者もいるわ。私達のボスのようにね。私達がここに来たのも、ボスの元に依頼が来たからだもの」
環は言葉を続けた。
「ならばご存知でしょうか? この世界の今は、貴女の世界の昔だと」
「…どういうことかしら?」
私達は皆首を傾げた。
ただでさえ意味が分からなかったのに、更に分からなくなった。
彼は難解な言語を話しているのか。それとも私の理解が遅いだけか。もしかしなくても後者だろう。
「この世界と貴女の世界は平行世界。けれど、時間の流れや年代までもが同じだというわけではない。この世界の今現在は、貴女の世界でいうところの過去なのです。
つまり貴女達は世界と時間を越えてやってきた。貴女達は未来から来たのです」
…少し分かったような、分からなかったような。難しい言葉が脳内で連なって容量を越えようとしている。
脳では理解しようと必死なのだが、つまりは美人双子の先輩は未来の世界から世界と時間を越えてやってきた、そう理解すればいいのだろうか。
「…由良姐、そんなこと、教えてくれなかった」
信じられないと言うように、北斗先輩は呟いた。
「きっと由良姐のことだもの、そのことも知っていたのでしょうね。それでも教えてくれなかったのは、きっと私達には知る必要のないことだったからよ。由良姐が必要最低限のことしか教えてくれないのは、いつものことでしょう?」
複雑そうな顔で北斗先輩は頷いた。
「この世界に落ちたのは、この世界の時間でいうと約20年前でしたから…貴方の世界で言うと…おそらく…400年ほど昔になるかと」
眉間に手をあて、知識を振り絞るように環は言った。
環の言葉を聞いた七星先輩は目を見開いた。
「400年ほど昔って…ちょ、ちょっと待って、400年前と言ったら、私達の組織が成立した年代よ!」
「…まさか、天変地異、原因って…!」
北斗先輩は驚きを隠さず、慌てて七星先輩を見た。
「えぇ、そのまさかよ」
すると七星先輩は私たちの方を見て言った。
「環さん。あなた達のいた世界の空が割れ、大地が砕けた原因は、私達の世界にあったわ」
環は驚いた顔をして、食いつくように質問を重ねた。
「それは本当ですか?原因は何なのです?」
七星先輩は少しの間だけ目を閉じた。
そしてゆっくり目を開ける。
ワインレッドは真っ直ぐ環を見ていた。
「原因は、サファイアよ」
七星先輩は言葉を続けた。
七星先輩がそれまで閉ざしていた口を開けた。
「何でしょう?」
「空が割れ、大地が砕けたのは、いつだったのかしら?」
なんだか答えを恐れているような口ぶりだった。
環はジッと七瀬先輩を見ると言った。
「…貴女は私達と同じ、別の世界の住人ですね」
「そうよ。私は魔法使いだもの」
七瀬先輩は隠すこともなく即答した。
「魔法使いである貴女の世界とこの世界、そして私達の世界はどれも平行世界なのです。そしてそのことをいちばん理解しているのは私達の世界の者。この世界で平行世界のことを知る者はほとんどいませんが、貴女の世界ならば知る者も少なくはないでしょう」
環の言葉に七星先輩は頷いた。
「そうね、知っている者もいるわ。私達のボスのようにね。私達がここに来たのも、ボスの元に依頼が来たからだもの」
環は言葉を続けた。
「ならばご存知でしょうか? この世界の今は、貴女の世界の昔だと」
「…どういうことかしら?」
私達は皆首を傾げた。
ただでさえ意味が分からなかったのに、更に分からなくなった。
彼は難解な言語を話しているのか。それとも私の理解が遅いだけか。もしかしなくても後者だろう。
「この世界と貴女の世界は平行世界。けれど、時間の流れや年代までもが同じだというわけではない。この世界の今現在は、貴女の世界でいうところの過去なのです。
つまり貴女達は世界と時間を越えてやってきた。貴女達は未来から来たのです」
…少し分かったような、分からなかったような。難しい言葉が脳内で連なって容量を越えようとしている。
脳では理解しようと必死なのだが、つまりは美人双子の先輩は未来の世界から世界と時間を越えてやってきた、そう理解すればいいのだろうか。
「…由良姐、そんなこと、教えてくれなかった」
信じられないと言うように、北斗先輩は呟いた。
「きっと由良姐のことだもの、そのことも知っていたのでしょうね。それでも教えてくれなかったのは、きっと私達には知る必要のないことだったからよ。由良姐が必要最低限のことしか教えてくれないのは、いつものことでしょう?」
複雑そうな顔で北斗先輩は頷いた。
「この世界に落ちたのは、この世界の時間でいうと約20年前でしたから…貴方の世界で言うと…おそらく…400年ほど昔になるかと」
眉間に手をあて、知識を振り絞るように環は言った。
環の言葉を聞いた七星先輩は目を見開いた。
「400年ほど昔って…ちょ、ちょっと待って、400年前と言ったら、私達の組織が成立した年代よ!」
「…まさか、天変地異、原因って…!」
北斗先輩は驚きを隠さず、慌てて七星先輩を見た。
「えぇ、そのまさかよ」
すると七星先輩は私たちの方を見て言った。
「環さん。あなた達のいた世界の空が割れ、大地が砕けた原因は、私達の世界にあったわ」
環は驚いた顔をして、食いつくように質問を重ねた。
「それは本当ですか?原因は何なのです?」
七星先輩は少しの間だけ目を閉じた。
そしてゆっくり目を開ける。
ワインレッドは真っ直ぐ環を見ていた。
「原因は、サファイアよ」
七星先輩は言葉を続けた。