天使のアリア––翼の記憶––
車までは数メートル。

最後の足掻きで必死に抵抗するけれど、

「無駄だ」

悔しいことにその通りだった。


「んっんぅう!」

必死に体に纏わりつく男達の手を振り払おうとするけれど、力の差は歴然で、敵わない。


「諦めの悪い小娘だ」


もう、車まで1メートルというところで、私は覚悟した。

もし、私の秘密について何か詮索されようものなら、舌を切って死のう。このことを知られるくらいなら、死んだ方がマシだ。


おばあちゃん、お父さん、ウサギ、乙葉、藍羅先輩…


ごめんなさい。

そして、ありがとうございました――――


車内に放り込まれる瞬間、瞳を閉じた、その時、





「ぐああぁっ!」




突然私を取り押さえていた男達が吹き飛んだ。

何が起こったのか全く分からなかったけれど、私の目の前に、私の壁になるように、いたの。










「月子、無事か?」









「う、さぎ…」



私の大事な幼馴染が。
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