天使のアリア––翼の記憶––
「小僧が…!」

ウサギに蹴られた男がよろめきつつも立ち上がり、切れた口から出てくる血を手の甲で拭いた。

「あのな、俺は小僧なんかじゃねーのっ」


ウサギの15メートル後ろにいるため、ウサギの表情等は全く分からないけれど、とても余裕そうだ。なんて肝の据わった奴。こんなにも大物感満載のウサギは初めてだ。

「そんなことどうでもいいんだよ!」

男の怒鳴り声が聞こえるが、

「ふーん、あっそ。後で俺の名前知ったら後悔するぞ?」

そんなことは露知らずとでも言うように、余裕そうな緊張感のないウサギ。


「月子、耳をふさいでろ!」

「え?」

「早く!」

言われるがまま、私は耳を塞いだ。


耳を両手で塞いでいても、多少は男達とウサギの会話が聞こえてくる。


「貴様、何をするつもりだ?」

殺気立っている男達。

「んー?何だろうな?」

溜息が出るほど、緊張感がない。


「まあ、取り敢えず......倒れてくれよ?」


次の瞬間、鋭く乾いた音と男の叫び声が響いた。そして男達は崩れるように倒れた。

鼻をかすめる、火薬の臭い。


え…?

さっきのって、もしかして…銃声?

運動会でよく聞く音にとても似ていた。


ウサギを見ると、後ろ姿でも分かった。

ウサギが銃を構えていることに。

そして、その引き金を引いたことも。


何で、ウサギがそんな危ないものを持ってるのさ?いや、それよりも、どうしてウサギが撃てるのさ?そんな特技があるなんて、知らなかったよ!?

って、大体、普通の高校1年生がそんなのを所持して持ち歩いているなんて、そんな、SF映画じゃあるまいし!それに、これって銃刀法違反で捕まるんじゃないの?嫌だな、次にウサギと会う時、場所は刑務所なのか…
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