天使のアリア––翼の記憶––
「月子、座りな」

お茶の用意をすっかり終えたおばあちゃんに言われて、私は渋々おばあちゃんの横に座った。机を挟んだおばあちゃんの前にはウサギが、その隣には乙葉が座っている。

なんだ、この目の前に広がる美男美女は。二人ともなんだか、実際の年齢よりもずっと大人に見えた。

ウサギなんかもう、乙葉さんと結婚させてください、とでも言いだしそうな雰囲気さえある。

いや、そう見えたのは私がちょっと混乱状態だからだろう。私でさえ、この場所に座るのは初めてだ。普段この部屋を使うのは、おばあちゃんと"お客様"だけ。

「おばあちゃん、聞いてもいい?」

「何だい?」

おばあちゃんの顔がいつもと違うことに気づいた。

え? 嘘でしょ?

おばあちゃん…仕事モードだ…!

「ど、どうして、この二人をここに通したの?」

少し動揺しつつも、私は尋ねた。

ここに通されたということは、まさか二人がお客様なの…? そんなの、有り得ないけれど…でも、おばあちゃん、完全に仕事モードだし…


「…大事な話が、あるからさ」

「大事な、話…?」

しかし私の問いには何も答えてくれなかった。

おばあちゃんの視線の先には二人しかいなかった。


「二人とも、本当に悪かったねえ」

「いえいえ、月子が無事で何よりですー」

「本当にな」

微笑みあうお三方。皆美形なんだから困る。


「それで、月子を追いかけた奴らは竹取会だった」

おばあちゃんが淹れたお茶を啜りながら、ウサギが言った。

「竹取会?奴らが動いたのかい?」

「あぁ。下っ端だったけどな。ボスらしき人物はいなかったから」

「そうかい。奴らがねえ」

おばあちゃんは納得しているようだ。


「あ、あの、竹取会って、何?」


音が、消えた。

この場が静かになった。

え、私、もしかして尋ねてはいけないことを聞いてしまった!?
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