天使のアリア––翼の記憶––
「あぁ、そうとも。二人とも月子と知り合ったころから知っていたねえ」

お茶を飲んでいるおばあちゃん。それだけでもう優雅なんだけれど、それどころじゃない。

「えぇぇぇぇぇええ!?」

なんで、なんで、何で!?いやいやいや、どうしてですか!?

「何だ? 俺たちが知らないとでも思っていたのか?」

私は頷いた。だってそれは私のトップシークレットだもん!

「だって、誰にも言ってなかったもん!」

そこでハッと気づいた。

「も、もしかして、今日、あの場にいたのって…」

「そうさ。二人に頼んだんだよ。月子を守ってくれと」

「ど、どうして?」

「月子が危ない輩に追いかけられるのは夢で見て分かってたからねえ。 それに二人とも、武術に精通してるんだよねえ」

そうだった。二人とも剣持ってたり銃持ってたり、かなり物騒だった。

「おいおい、物騒とか言うなよな。 俺たちはそうそう武力を行使したりしないっつの」

「今日みたいにちょっと危険なときくらいしか使わないんだよー?」

今日が"ちょっと"危険だったなんて言える!? ねぇ、どこがちょっとだった!?

「あ、因みに俺が得意なのは銃じゃなくて刀の方だかんな? まあ銃も使えないわけではないけど」

「えっそうなの!?」

刀が得意というのには驚いた。

だって剣道もしていなかったし、バスケ一筋だと思ってたのに!

「まぁ、家では剣のことばかりで疲れるからな。バスケは楽しいし、いい息抜きにもなるんだよなー」

息抜きになる、の理由だけでキャプテンさんより強いって、あんた、なんなの…

「それに乙葉も驚いたよ。 まさか乙葉があそこまでアクティブだとは思わなかった」

だって、あの乙葉が、あのふんわり癒し系で美術部部長の乙葉が、物騒にも日本刀なんか持っちゃって、それもかなりの実力だなんて思わなかった。

「実は拳銃の方が得意なんだよねー」

「えっ!? そうなの!?」

嘘…乙葉が拳銃!?あり得ない…

「銃だけ使えても、銃が手元からなくなったときに困るでしょー? だからウサギから剣を習ってるんだー」

「そ。俺って師範だったりするんだよな」

「えぇぇえ!?」

ウサギが師匠!? あ、あり得ない。あり得ないでしょ、高校一年生で、師匠!?

しかも、あのウサギが!?
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