天使のアリア––翼の記憶––
「ちょっと混乱するかもしれないけど、まぁ、この二人が夢巫女を知っているということ、月読が見た夢が大事なものだということだけ覚えていればいい。 後は忘れたって構わないさ」

おばあちゃんが目を細めてお茶を啜っていた。一々動作に無駄がなく綺麗だ。

「まぁ、何か困ったことがあれば、俺か乙葉を呼びな。 いつだって助けてやるから」

ウサギが不敵な笑みを浮かべた。

なるほど、クラスの皆が言うように、確かにカッコイイのかもしれないが、

「…ムカつく」

何その顔。 見てるだけでイライラする。

「なっ!? 見てるだけで!? 酷くね!?」

何時もの如く突っかかってきたウサギを、

「はいはい、喧嘩はしないのー」

これまた何時もの如く、乙葉が笑顔で仲介して喧嘩は終結する。

あぁ、この二人と一緒にいるときが本当に楽しい。いつまでも続けばいいな。

「ウサギ、乙葉…今日は助けてくれて本当にありがとう」

すると二人は笑った。二人とも美形だから、その笑顔の美しいこと。

「俺らは幼馴染だろ? そんなこと気にすんなよな」

「そうだよー。当たり前でしょー?」

こんなにも優しいから、あたしは二人が大好きなんだ。

なんて、恥ずかしくて言えやしないけど。


「そろそろ、帰るな」

「そうだねー。時間も遅いしー」

時計を見れば、夜も8時を示している。こんなに遅ければ、ウサギはともかく、乙葉が危険だ。

「あはは、そんなに心配しなくても大丈夫よー。それに、もし何かあったら、倒すからー」

ふふふ、と微笑む乙葉。 倒す、のところだけ声が少し低かったのは気のせいか。

…始めて乙葉の笑顔が怖いと思った。


「まぁ、俺が送るから安心しな」

私の方を見て、幼い子に諭すかのように言ってくるウサギはやはりムカつくが、一番頼りになる人物だとは分かっている。

「頼んだよウサギ」

「任せとけって」


ウサギが一緒なら、大丈夫かな? まぁ、二人とも充分に強いし、ここから歩いても5分もかからない場所に住んでいるもんね。
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