隠れ俺様は壁ドンで愛を囁く
噂で聞く彼の姿。

興味があってもなくでも、嫌でも聞こえてくるそれに。

偽りのあなたを見つけては、どうしてそんなにつらそうに笑うのかと遠巻きに見ていた。

だから、初めてすれ違ったとき。

つい、言ってしまったんだ。

「正直腹がたった。
お前に俺の何がわかるんだって。
だけど、それと同時に嬉しかったんだ。
嘘と偽りを重ねていくなかで、“俺”をお前がちゃんと、見つけてくれた気がしたから」

嬉しそうに目を細めた先輩は、片腕をあげて私の頭を撫でてきた。

何気に心地よいそれに、何も言わずにされるがままになる。

でもさ、

「…そんなお前が好きなんだよ」

……不意打ちでそれは卑怯だと思う。

「先輩、やめてください。
てか、どいてください」

「さっき無理って言っただろ?」

冷静になって言った言葉は、ピシャリと叩きつけられる。

そうだよ、そうだよ…!

なんか良い話っぽくて忘れてたけど…。

私、追い詰められてたんだったー!!
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