たった一つのたからもの
「音亞。音亞は今日、どんな事をしたんだい?」

幸也が音亞の頭を優しく撫でながら問いかける。幸也は小さく微笑み、先ほどまで音亞を撫でていた手を、カバンへと向けた。

「音亞が好きなオルゴールを、今日はお土産に買ってきたからここに置いておくよ。御免な、俺が仕事をさぼっていればお前の笑顔が見れるのに」

幸也は、カバンから取り出された四角い木箱を、近くのドレッサ―に置いた。
写真立てがふと目についたようで、写真を見ながら呟いた。

「御免な」

何に対する謝罪かは、解らない。幸也は小さく笑って語り出した。

「もう少し前ならもっともっと話せたのに、仕事が増えてまた増えてで疲れたよ。明後日は休みがとれるんだ。その時は音亞が行きたがっていた、遊園地に行こうか」



 『うん、パパやママと、遊園地行きたい』


 
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