その蜜は海のように
「熱がありますね。今日こそ仕事を休んでいいだきますわ。」

そう言ってリィアを寝台に強制的に寝かせた侍女のアーヤが言った。

「アーヤ、お願いよ。部屋から出して。」

「駄目ですわ。リィア様、今貴女様は領主でもあります。領主ともあろう方が風邪引きとはなりません。仕事は健康管理からですわ。」

アーヤに退く気がないのはよく分かった。

「そうね。今日は寝てしっかり風邪を治すわ。」

リィアがそう言うとアーヤは、この部屋に来て初めての笑顔で頷いた。


突然の報せが来たのは熱が下がり、風邪もすっかり治った頃だった。

リィアは、いつものように会議を終え、父の書斎を借りて書類に印を押していた。

「リィア様、御主人様がお呼びですわ。」

「おはよう。アーヤ、お父様がどうかなさったの?」

「何か思い詰めたような顔をなさってたわ。」

また、面倒な事がありそうだが今度こそは何も起きて欲しくないとリィアは思ったが、そう行かないのが世の常だ。

溜め息をついて今度はとぼとぼ父の元へ向かった。
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