その蜜は海のように
「ああ!一つ片付いたわ!」

リィアは首をぐるりと回した。

「今日は後一つですから頑張って下さいな。」

アーヤは、リィアが挨拶している間かなり後方の廊下から見守っていた。

「でも、今日の晩餐は楽しみだわ。帝国中のあらゆる料理が楽しめるんですもの。」

リィアの頭は美味しそうな料理で溢れかえった。

「あら、リィア様たら食べ物の事ばかり。」

そう言うアーヤも頬が緩んでいる。

「晩餐まであともう少し、頑張るわ。」

「そのいきです!」


高く昇っていた太陽も傾いて来た頃に今度は入団式が始まった。


入団式はリィアの想像よりも簡単だった。


先程の祭壇で署名をして、手続きの紙に書いてある誓文を読むだけだ。

ただ、一つ欲を言うなら誓文がやたら長く舌が縺れそうになるのをなんとかして欲しいとリィアは心で叫んだ。

式を終え、扉が閉まった時の開放感は半端ではなく小走りでアーヤのもとへ行った。

「アーヤ!やっと終わったわ。...アーヤ?」

嫌な予感がした。

そして、それは的中するのだ。

リィアの予想通り、振り向いた先の化粧室からアーヤが登場した。


ただし、本人の姿は見えない。

大量の悪夢のようなドレスの山を抱えて。


のそり、のそり

と、リィアににじりよってきた。
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