その蜜は海のように
「どのドレスになさいます?この青いドレスは銀の飾りがついていてリィア様にお似合いだと思いますわ。それと、お化粧はどう致しましょう?」

アーヤは物凄い勢いでまくし立ててきた。

「アーヤに任せるわ。服装の事はよく分からないから。」

リィアは苦笑して鏡台の椅子に座った。


いつもはおっとりとしているアーヤは別人になったように素早く、それでいて丁寧にリィアの支度を進めて行く。

髪を簡素だが、細かく捻り優美に形作り、仕上げの紅を引き何度も確認して最後に納得の行ったように頷いた。

正直、見とれるくらい自分を綺麗だとリィアは思った。

アーヤは、実は天才かもしれない。

なんとなくこのドレスを仕立てたのはアーヤだと感じた。

ドレスも令嬢が着るようなものではなく、貴婦人ぜんとした意匠を凝らしたドレスに仕立ててあったが裾、袖、襟から覗いたレースがいかにもアーヤらしい細工でリィアは微笑んだ。

「じゃあ、行きましょうか。お腹がすいたわ。」

「ええ、それにリィア様はきっとどの貴婦人よりも美しいに違いありません。」

よほど今日のリィアの出来ばえに自信があるらしい。

「そうかしら?」

「もちろんですわ。」

リィアはアーヤと晩餐の行われる大広間へと向かった。


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