その蜜は海のように
大広間では、今日の主役であるリィアの話題で持ちきりになっていた。

帝国の政治家や貴族、式に参加した領主達が主に晩餐へ出席していた。

「いや、リィア様は式の時にちらりと窺っただけだがとても美しい方で驚いたぞ。」

一人の領主がそうこぼした。

「あら、それは是非ともお会いしとうございますわ。」

領主の呟きを聞いた、自分の美貌には自信のある若い婦人が挑発的に言った。

「ああ、それはもう夢のようだったぞ。それに、美しいだけではなく政治家としての才もあると聞いた。」

「ふん、どうせ周りがお世辞で言っているだけでしょう。」

若い婦人はどうやら領主がリィアのことばかりを褒め称える事が気に入らなかったらしい。

その時、場を見計らったように大広間の重々しい扉が開いた。



リィアは大広間に入ると突き刺さるような視線を感じた。

皆がこっちを見てる。そう思うとリィアは倒れそうになったがここまで来て引き返す訳にもいかない。

気を引き締め、リィアは横目で背後に付き添うアーヤの方を窺うとアーヤは信じられないくらい涼しい顔でリィアに付いて来ている。


それを見たリィアは胸を張り堂々として席に着いた。

侍女の方が堂々としていたのでは主人として示しがつかないではないか。それに領主としてそれは失格である。そう思うとリィアは自然と前を向けた。

そして、晩餐が始まった。



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