その蜜は海のように
リィアはずっと落ち着かなかった。

複雑なマナーを間違えたわけでも葡萄酒を溢したわけでもない。


斜め前の席に着いている若い婦人がずっとこちらをじろじろ見ているからだ。

最初は婦人がリィアと同じ位の歳だから気になって見ているのかと思っていたがさすがにそこまで食事中に見られて嬉しい人もそうそう居ないだろう。

リィアは意を決して話しかけることにした。

「あの、ご気分が優れないのでしょうか?」

婦人は目を見開いた。
どうやら無意識に見ていたらしい。

「ええ、だ..大丈夫よ。」

顔を赤らめ慌てて答える婦人はぷいとそっぽを向いてしまった。

それきり婦人がこちらを見ることはなかったが、何故婦人が見てきたかなどリィアには知るよしもなかった。

と、ちょうど締めのスープが運ばれてきた。

美味しそうな匂いを誰かの視線を感じずに味わえると思った矢先に今度はリィアのほうが話しかけられた。


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