その蜜は海のように
その日から、リィアは作戦を遂行した。

まず、旅をするにはどうすればいいのかを夜に本を読むだけでは到底足りないから、昼間の作法や踊りの練習を仮病で断り部屋に籠った。

それから旅に当たり、出来るだけちいさい金目の物を鞄に入れて、服の裏に銀貨と金貨を縫い付けた。

大分作業を進めてからリィアは部屋を見渡した。

「なんだか寂しいわね。」

生まれてこのかた自分の石造りで広いのに何処か窮屈な部屋が嫌いだったが、お別れだと思うと離れがたい。

そんな思いを振り払うように、今度は地図をみた。

旅に出るべきか、家に残るか迷ったら必ずリィアは三枚の地図をみた。

地図を見ると初めて世界の広さを手に握りしめた時の喜びが胸一杯に広がるからだ。
< 7 / 27 >

この作品をシェア

pagetop