吐き捨てられるくらい
「別れを切り出すのも、相当な勇気がいったはずだから」
「それは……」
「俺が本気で真琴を好きだっていったときも、相当な勇気がいった」
そう照れたような笑みをこぼした敦司さんの声はちゃんと耳に入っている。だが、私の視界は薄暗く、それでいて滲み始めていた。
彰吾に別れを言う前に、敦司さんから告白をうけた。嫌じゃなかった。むしろ、一番欲しいものでもあった。
本当に自分を好いていてくれて、大切に思ってくれて、真剣に話し合える、そんな人が欲しかった。
――――彰吾にいわなくては。
ここでも私は迷った。
「あいつね、最後何て言ったと思う?」
「うん?」
敦司さんは丁寧に布団を私の肩まであげていく。
そういえば彰吾もしてくれていたが、いつからしなくなっただろう。
「女の癖に、とか散々いって」
声がふるえてしまって。
ああ、みっともないな、と思った。
喉の奥がふるえて、胸が痛くて、寒くないのに、冷たい。
私が誰かに触れたらそれが伝染してしまわないだろうか。だが、敦司さんの胸はあたたかいし、安心している。終わったんだ、と。
私はまるで子供のようだった。
敦司さんが腕を出して、あやすように私を同じリズムでたたく。我慢していた涙が止まらなくなる。しゃっくりのような、ひっく、という情けない声が出る。
真琴、と呼ぶ声にさえ反応したくなくて、私は顔を伏せたまま。