小咄
店に帰ると、千代が急いで身支度していた。
「あれ千代。これからアフターなの?」
「そう。もぅ、こうも毎日同伴・アフターが続いちゃ、身体がもたないよ」
ぶつぶつ言いながらも、しっかり化粧直しをしていた千代が、ちらりと深成を見た。
「あんたは? てっきりアフターに行ったのかと思ったのに」
「わらわ、そんなの入ったことないもの」
「格好良い太客が付いたわりにゃ、あっさりしたお人だねぇ」
ちょっと意外そうに言う。
「わらわもよくわかんないけど。真砂、ホストだから、同伴する時間はないし。アフターも疲れるんじゃない?」
いつも真砂は、閉店近くなってから来る。
同じ夜の仕事だから、それは仕方ないのだが、店にいる時間がいくら短くても、真砂はアフターを希望しない。
短い時間で、凄い金を落として帰っていく。
「わらわ、やっぱり魅力ないからかなぁ」
あまり長く一緒にいたいと思える女ではないのかと、深成は少ししょんぼりと言う。
千代は上着を羽織りながら、ぐりぐりと手荒く深成の頭を撫でた。
「ま、女の魅力はないけどね。いいじゃないか、同伴もアフターもなしでも、上客なんだから」
でも、と千代は、ずいっと深成に顔を寄せた。
「しっかり捕まえておかないといけないから、いっそのこと、枕使っちまったらどうだい?」
「ま、枕っ?」
枕とは、『枕営業』のこと。
つまり、身体で客を繋ぎ止めるのだ。
キャストの中には、同伴やアフターの時に、ホテルに行く者もいるらしい。
「まぁ、あんたには似合わないけどね」
あはは、と明るく笑い飛ばして、千代は店を出て行った。
「ママぁ」
キャストが皆帰った後で、深成はこの店のママである狐姫の横に座った。
カウンターに座って水割りを飲んでいる狐姫は、着物姿の絶世の美女だ。
どこか妖しげな雰囲気を持つこのママは、何気に年齢不詳でもある。
「おや深成。今月も三位、おめでとうさん。あのホストの兄さんに感謝だね」
言いつつ、グラスを用意して、そこにオレンジジュースを入れる。
深成があまり飲めないのを知っているのだ。
「あれ千代。これからアフターなの?」
「そう。もぅ、こうも毎日同伴・アフターが続いちゃ、身体がもたないよ」
ぶつぶつ言いながらも、しっかり化粧直しをしていた千代が、ちらりと深成を見た。
「あんたは? てっきりアフターに行ったのかと思ったのに」
「わらわ、そんなの入ったことないもの」
「格好良い太客が付いたわりにゃ、あっさりしたお人だねぇ」
ちょっと意外そうに言う。
「わらわもよくわかんないけど。真砂、ホストだから、同伴する時間はないし。アフターも疲れるんじゃない?」
いつも真砂は、閉店近くなってから来る。
同じ夜の仕事だから、それは仕方ないのだが、店にいる時間がいくら短くても、真砂はアフターを希望しない。
短い時間で、凄い金を落として帰っていく。
「わらわ、やっぱり魅力ないからかなぁ」
あまり長く一緒にいたいと思える女ではないのかと、深成は少ししょんぼりと言う。
千代は上着を羽織りながら、ぐりぐりと手荒く深成の頭を撫でた。
「ま、女の魅力はないけどね。いいじゃないか、同伴もアフターもなしでも、上客なんだから」
でも、と千代は、ずいっと深成に顔を寄せた。
「しっかり捕まえておかないといけないから、いっそのこと、枕使っちまったらどうだい?」
「ま、枕っ?」
枕とは、『枕営業』のこと。
つまり、身体で客を繋ぎ止めるのだ。
キャストの中には、同伴やアフターの時に、ホテルに行く者もいるらしい。
「まぁ、あんたには似合わないけどね」
あはは、と明るく笑い飛ばして、千代は店を出て行った。
「ママぁ」
キャストが皆帰った後で、深成はこの店のママである狐姫の横に座った。
カウンターに座って水割りを飲んでいる狐姫は、着物姿の絶世の美女だ。
どこか妖しげな雰囲気を持つこのママは、何気に年齢不詳でもある。
「おや深成。今月も三位、おめでとうさん。あのホストの兄さんに感謝だね」
言いつつ、グラスを用意して、そこにオレンジジュースを入れる。
深成があまり飲めないのを知っているのだ。