小咄
とある家庭教師の恋愛事情
【キャスト】
家庭教師:真砂 生徒:深成 深成の同級生:あき
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
一月末。
深成は本屋で、料理本を睨んでいた。
そこに、同じクラスのあきがやってくる。
「深成ちゃん、何やってんの?」
言いながら深成の前の棚を見たあきは、ははぁ、と口角を上げた。
「バレンタインかぁ。深成ちゃん、もしかして、例の先生にあげるの?」
「う、うん。そのつもり」
こくりと素直に頷く。
深成は少し前から家庭教師をつけられた。
その先生が、とても格好良いのだという。
「珍しいよね、深成ちゃんがそんなこと言うの。結構誰にでも懐くけど、誰かを好きだとかいう話は、全然興味なかったのに」
棚にあるバレンタイン用のお菓子本を適当に捲りながら、あきが呟いた。
「わらわだって初めてだよぅ。んでも先生、普段素っ気ないのにさ、二学期の最後のテストが良かったし、通知簿も上がってたから、クリスマスにプレゼントくれたんだ」
「へぇ。そんなことされたら、萌えるかもね〜」
少し目尻を下げながら、あきが深成をじろじろと見た。
が、特に目に付くところには、これというものはない。
何となく、クリスマスのプレゼントといえばアクセサリーのように思っていたが、違うのだろうか。
「何貰ったの?」
あきの質問に、深成はごそごそと、持っていた小さいポシェットを探った。
「これっ。可愛いでしょ?」
何かポシェットが不自然に膨らんでいると思っていたが、なるほど、これが入っていたのか。
あきは目の前に突き出されたブツを、まじまじと見た。
にこにこと深成が大事そうに握り締めているのは、15cmぐらいの犬のぬいぐるみ。
「この子、これぐらいのブーツに入っててね、ブーツには、お菓子がいっぱい詰まってたんだよ。この子が蓋でね〜」
なるほど。
クリスマスによくある、ブーツ型のお菓子の詰め合わせか。
確かに深成は好きそうだが。
「……深成ちゃん〜。折角好きな人が出来たんだから、もうちょっと色気付きなよ」
あきが胡乱な目を向ける。
あきも深成もまだ小学生だが、高学年だ。
今時の小学生というのは、多分に色気付いているものなのに、深成は恐ろしく時代の波に乗っていない。
低学年と変わらない。
「大体さぁ、その先生だって、大人でしょ? 何歳だったっけ? 大学生だったよね? だったらもうちょっと、女心をわかってると思うんだけど」
「ええ〜? よっくわかってるじゃん。お菓子は美味しかったし、この子は可愛いし」
それは女心じゃなくて深成の心だ、と心の中で突っ込み、だがあきは、再び目尻を下げた。
---そっか。そういえば、深成ちゃんが先生のこと好いてるんだから、深成ちゃんのことを、よりわかってたほうが良いのか---
あらあらこれは、と、あきはほくそ笑んだ。
家庭教師:真砂 生徒:深成 深成の同級生:あき
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
一月末。
深成は本屋で、料理本を睨んでいた。
そこに、同じクラスのあきがやってくる。
「深成ちゃん、何やってんの?」
言いながら深成の前の棚を見たあきは、ははぁ、と口角を上げた。
「バレンタインかぁ。深成ちゃん、もしかして、例の先生にあげるの?」
「う、うん。そのつもり」
こくりと素直に頷く。
深成は少し前から家庭教師をつけられた。
その先生が、とても格好良いのだという。
「珍しいよね、深成ちゃんがそんなこと言うの。結構誰にでも懐くけど、誰かを好きだとかいう話は、全然興味なかったのに」
棚にあるバレンタイン用のお菓子本を適当に捲りながら、あきが呟いた。
「わらわだって初めてだよぅ。んでも先生、普段素っ気ないのにさ、二学期の最後のテストが良かったし、通知簿も上がってたから、クリスマスにプレゼントくれたんだ」
「へぇ。そんなことされたら、萌えるかもね〜」
少し目尻を下げながら、あきが深成をじろじろと見た。
が、特に目に付くところには、これというものはない。
何となく、クリスマスのプレゼントといえばアクセサリーのように思っていたが、違うのだろうか。
「何貰ったの?」
あきの質問に、深成はごそごそと、持っていた小さいポシェットを探った。
「これっ。可愛いでしょ?」
何かポシェットが不自然に膨らんでいると思っていたが、なるほど、これが入っていたのか。
あきは目の前に突き出されたブツを、まじまじと見た。
にこにこと深成が大事そうに握り締めているのは、15cmぐらいの犬のぬいぐるみ。
「この子、これぐらいのブーツに入っててね、ブーツには、お菓子がいっぱい詰まってたんだよ。この子が蓋でね〜」
なるほど。
クリスマスによくある、ブーツ型のお菓子の詰め合わせか。
確かに深成は好きそうだが。
「……深成ちゃん〜。折角好きな人が出来たんだから、もうちょっと色気付きなよ」
あきが胡乱な目を向ける。
あきも深成もまだ小学生だが、高学年だ。
今時の小学生というのは、多分に色気付いているものなのに、深成は恐ろしく時代の波に乗っていない。
低学年と変わらない。
「大体さぁ、その先生だって、大人でしょ? 何歳だったっけ? 大学生だったよね? だったらもうちょっと、女心をわかってると思うんだけど」
「ええ〜? よっくわかってるじゃん。お菓子は美味しかったし、この子は可愛いし」
それは女心じゃなくて深成の心だ、と心の中で突っ込み、だがあきは、再び目尻を下げた。
---そっか。そういえば、深成ちゃんが先生のこと好いてるんだから、深成ちゃんのことを、よりわかってたほうが良いのか---
あらあらこれは、と、あきはほくそ笑んだ。