小咄
「六郎兄ちゃん。東のほうに行く特急とか、止まっちゃってるかもよ。帰れないんじゃない?」
現在地は深成のシェアハウスから、電車で二つほどだ。
近距離の電車はともかく、六郎が乗る長距離列車など、この台風では止まっているかもしれない。
あきも帰れないぐらいなのだし。
「また家に泊まる?」
「いや、それも悪いよ。ホテルでも取るか……」
六郎が携帯を取り出したとき、再び深成の携帯が鳴った。
今度は電話のようだ。
深成が画面を見、あれ、と呟きながら通話ボタンを押した。
「もしもし真砂? どうしたの?」
深成の第一声に、電話をかけようとしていた六郎の手が止まった。
『お前今どこにいる』
「六宮町。真砂は? 今日お仕事だったんじゃないの?」
『もう終わった。さっき帰ってきたところだが、捨吉から後輩の家に泊まると連絡があった。お前は帰れるのか?』
「えっ! そうなの? 電車、もしかして止まっちゃってる?」
電話口に言い、次いで深成は六郎を見た。
「何か、皆この台風で帰れないから、お友達のところに泊まるんだって。電車、やっぱり止まっちゃってるみたい。どうしよう」
別に深成は、通話口を押さえていない。
なので、電話の向こうの真砂にも、この会話は聞こえている。
『……まだあいつといんのか』
ぼそ、と小さく、真砂の声が聞こえた。
ついでに舌打ちも聞こえたような。
気のせいだろうか。
「え? ちょ、ちょっと待って。皆って? え、その電話は、あの人だよね?」
慌てて六郎が身を乗り出す。
「うん。真砂は帰ってるみたいだけど。あれ? てことは、真砂だけってことか」
呑気に言う深成に、六郎は体温が一気に上がった。
一番危険な男と、可愛い深成が二人っきり……!!
「い、いかん!! そそそ、そんなこと、許せるわけないだろう!」
「え? だって、仕方ないじゃん。ていうか、わらわも帰れない……。六郎兄ちゃん、ホテル取るなら、わらわも一緒に……」
深成が言った途端、六郎の身体が傾いだ。
机に付いていた腕が折れ、へたへたと頽れる。
顔が真っ赤だ。
当の深成から、衝撃的なお誘いの言葉を聞いてしまったからだが。
そのとき深成の持っている携帯から、低い声が聞こえた。
『迎えに行ってやる。そこの駅前で待ってろ』
言うなり、ぶちんと通話が切れる。
深成はしばし握りしめた携帯を見ていたが、やがて、やれやれ、と鞄にしまった。
「もぅ、相変わらず素っ気ないんだから。でも良かったぁ。迎えに来てくれるって……て、六郎兄ちゃんっ! 大丈夫?」
安心して前の六郎に目を戻した深成が声を上げる。
六郎が、テーブルに突っ伏していた。
現在地は深成のシェアハウスから、電車で二つほどだ。
近距離の電車はともかく、六郎が乗る長距離列車など、この台風では止まっているかもしれない。
あきも帰れないぐらいなのだし。
「また家に泊まる?」
「いや、それも悪いよ。ホテルでも取るか……」
六郎が携帯を取り出したとき、再び深成の携帯が鳴った。
今度は電話のようだ。
深成が画面を見、あれ、と呟きながら通話ボタンを押した。
「もしもし真砂? どうしたの?」
深成の第一声に、電話をかけようとしていた六郎の手が止まった。
『お前今どこにいる』
「六宮町。真砂は? 今日お仕事だったんじゃないの?」
『もう終わった。さっき帰ってきたところだが、捨吉から後輩の家に泊まると連絡があった。お前は帰れるのか?』
「えっ! そうなの? 電車、もしかして止まっちゃってる?」
電話口に言い、次いで深成は六郎を見た。
「何か、皆この台風で帰れないから、お友達のところに泊まるんだって。電車、やっぱり止まっちゃってるみたい。どうしよう」
別に深成は、通話口を押さえていない。
なので、電話の向こうの真砂にも、この会話は聞こえている。
『……まだあいつといんのか』
ぼそ、と小さく、真砂の声が聞こえた。
ついでに舌打ちも聞こえたような。
気のせいだろうか。
「え? ちょ、ちょっと待って。皆って? え、その電話は、あの人だよね?」
慌てて六郎が身を乗り出す。
「うん。真砂は帰ってるみたいだけど。あれ? てことは、真砂だけってことか」
呑気に言う深成に、六郎は体温が一気に上がった。
一番危険な男と、可愛い深成が二人っきり……!!
「い、いかん!! そそそ、そんなこと、許せるわけないだろう!」
「え? だって、仕方ないじゃん。ていうか、わらわも帰れない……。六郎兄ちゃん、ホテル取るなら、わらわも一緒に……」
深成が言った途端、六郎の身体が傾いだ。
机に付いていた腕が折れ、へたへたと頽れる。
顔が真っ赤だ。
当の深成から、衝撃的なお誘いの言葉を聞いてしまったからだが。
そのとき深成の持っている携帯から、低い声が聞こえた。
『迎えに行ってやる。そこの駅前で待ってろ』
言うなり、ぶちんと通話が切れる。
深成はしばし握りしめた携帯を見ていたが、やがて、やれやれ、と鞄にしまった。
「もぅ、相変わらず素っ気ないんだから。でも良かったぁ。迎えに来てくれるって……て、六郎兄ちゃんっ! 大丈夫?」
安心して前の六郎に目を戻した深成が声を上げる。
六郎が、テーブルに突っ伏していた。