小咄
何てことのないように軽く言うが、おそらく真砂のこと、わざわざ夕飯の人数確認だけのために、電話することなどないだろう。
そこまで他人のことを気にする人間ではない。
唯一予定がわからないのが深成だったからだ。
これが他のメンバーだったら、真砂は別に気にすることなどなかっただろう。
夕飯だって、自分の分だけ作ればいいのだ。
それまでに帰ってきたら、ついでに作ってくれるかもだが、時間のわからない者の分など、わざわざ作ったりしない。
それに、と、六郎は空を見上げた。
物凄い雨だ。
傘をさしている人も、傘の意味がないほどびしょ濡れになっている。
おそらく、夕飯どうこうという理由ではない。
深成が困っているだろうから、電話をかけてきたのだ。
悶々としていると、あ、と深成がロータリーのほうに走り寄った。
シルバーのVitzが、深成の前に止まった。
「ありがとうっ! 助かったぁ~」
満面の笑みで、助手席のドアを開けつつ、深成が真砂に言う。
そして、そのまま深成は、少し後ろにいる六郎を指した。
「あのね、六郎兄ちゃん、風邪引いちゃって、熱があるの。電車はこの状態だし、普通の電車でこれじゃ、特急なんて動いてないでしょ。帰れないだろうから、また家に泊まってもらっていい?」
一瞬、真砂の眉間に皺が寄った。
が、意外にあっさりと頷いたことに、六郎のほうが少し驚く。
「良かった。ありがと、真砂」
「いいから、さっさと乗れ」
「うん。六郎兄ちゃん、さ、乗って」
くり、と振り向いて、深成が六郎に手招きする。
急いで六郎は、後部座席に乗り込んだ。
深成が了解を取ってくれたとはいえ、何となく深成が乗った時点で、真砂は車を発進させるような気がしたのだ。
「すまない」
一応挨拶はしておく。
どんな相手でも、六郎が礼を失することはない。
真砂はちらりとバックミラー越しに六郎を見ただけで、特に何も言わなかった。
真砂が六郎に何も言わなかったのは、文句がなかったからではない。
深成が六郎のことを頼んだとき、まだ深成は車に乗ってなかった。
その状態で長々話していたら、深成がその間ずっと濡れることになる。
深成を早く車に乗せるため、深成を濡らさないために、真砂は六郎が泊まることに対して、何も言わなかったのだ。
「真砂。晩御飯、何にするの? 何か決めてる?」
そんな男二人の微妙な胸の内など全く解することなく、深成が呑気に言う。
「別にまだ決めてない。買い物も行ってないしな……」
「それじゃ、鶏肉買ってきたから、シチューにしよう。六郎兄ちゃん、シチューなら温まるし、いいでしょ?」
にこにこと言いながら、深成が最後に寄ったスーパーの袋から、でっかい鶏肉のパックを出す。
お徳用3kgパック。
どんだけ食べるんだか。
「そうそう。いろんな美味しそうな果物が出てきてたんだけどね、真砂がいないから、買えなかったんだよね~。秋はいろいろ美味しそうで嬉しいね~。真砂、栗があったから、今度栗ご飯作ろうね」
「お前はほんとに、食い意地が張ってるな」
「食べることは生きることだよ! 何でも美味しく食べられるってのはいいことじゃん」
そんな運転席と助手席のやり取りを、後部座席の六郎は、やはり微妙な表情で聞いていた。
そこまで他人のことを気にする人間ではない。
唯一予定がわからないのが深成だったからだ。
これが他のメンバーだったら、真砂は別に気にすることなどなかっただろう。
夕飯だって、自分の分だけ作ればいいのだ。
それまでに帰ってきたら、ついでに作ってくれるかもだが、時間のわからない者の分など、わざわざ作ったりしない。
それに、と、六郎は空を見上げた。
物凄い雨だ。
傘をさしている人も、傘の意味がないほどびしょ濡れになっている。
おそらく、夕飯どうこうという理由ではない。
深成が困っているだろうから、電話をかけてきたのだ。
悶々としていると、あ、と深成がロータリーのほうに走り寄った。
シルバーのVitzが、深成の前に止まった。
「ありがとうっ! 助かったぁ~」
満面の笑みで、助手席のドアを開けつつ、深成が真砂に言う。
そして、そのまま深成は、少し後ろにいる六郎を指した。
「あのね、六郎兄ちゃん、風邪引いちゃって、熱があるの。電車はこの状態だし、普通の電車でこれじゃ、特急なんて動いてないでしょ。帰れないだろうから、また家に泊まってもらっていい?」
一瞬、真砂の眉間に皺が寄った。
が、意外にあっさりと頷いたことに、六郎のほうが少し驚く。
「良かった。ありがと、真砂」
「いいから、さっさと乗れ」
「うん。六郎兄ちゃん、さ、乗って」
くり、と振り向いて、深成が六郎に手招きする。
急いで六郎は、後部座席に乗り込んだ。
深成が了解を取ってくれたとはいえ、何となく深成が乗った時点で、真砂は車を発進させるような気がしたのだ。
「すまない」
一応挨拶はしておく。
どんな相手でも、六郎が礼を失することはない。
真砂はちらりとバックミラー越しに六郎を見ただけで、特に何も言わなかった。
真砂が六郎に何も言わなかったのは、文句がなかったからではない。
深成が六郎のことを頼んだとき、まだ深成は車に乗ってなかった。
その状態で長々話していたら、深成がその間ずっと濡れることになる。
深成を早く車に乗せるため、深成を濡らさないために、真砂は六郎が泊まることに対して、何も言わなかったのだ。
「真砂。晩御飯、何にするの? 何か決めてる?」
そんな男二人の微妙な胸の内など全く解することなく、深成が呑気に言う。
「別にまだ決めてない。買い物も行ってないしな……」
「それじゃ、鶏肉買ってきたから、シチューにしよう。六郎兄ちゃん、シチューなら温まるし、いいでしょ?」
にこにこと言いながら、深成が最後に寄ったスーパーの袋から、でっかい鶏肉のパックを出す。
お徳用3kgパック。
どんだけ食べるんだか。
「そうそう。いろんな美味しそうな果物が出てきてたんだけどね、真砂がいないから、買えなかったんだよね~。秋はいろいろ美味しそうで嬉しいね~。真砂、栗があったから、今度栗ご飯作ろうね」
「お前はほんとに、食い意地が張ってるな」
「食べることは生きることだよ! 何でも美味しく食べられるってのはいいことじゃん」
そんな運転席と助手席のやり取りを、後部座席の六郎は、やはり微妙な表情で聞いていた。